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温暖化でコケが減る?

(背景)

地球温暖化による気温の上昇が生態系の質を変化させてしまうことが危惧されています。特に、北極などの極域や亜高山~高山帯などの冷涼な地域では、地球温暖化が生態系に与える影響がより深刻になる、と考えられています。

 

亜高山帯~森林限界ではしばしば林床が広くコケに被われ、森林生態系の水や栄養塩類の循環に果たすコケの役割も大きくなります。そのため、気温の上昇がコケに与える影響を解明することは、生態系の機能の構造の変化を考える上でも重要です。

 

 

(目的)

そこで、私たちは、Open top chamberOTC)を用いて、人為的に気温を上昇させた「温暖区」をつくり、森林限界付近の気温の上昇が林床のコケの種数・被度に与える影響について検討しました[代表;田中健太(筑波大学)]。

 

 

(結果)

温暖区のコケの変化をモニタリングした結果、対照区と比べて温暖区では日中、約1.4度の気温の上昇がみられ、1年後にはなんど、コケの被度は50%も減少してしまいました。

 

 

(考察)

温暖区でコケが大きく減少した理由として、(1)気温の上昇によって相対湿度が低下し、コケの生育を妨げたこと、(2)気温の上昇により他の林床植物の成長速度が速まってリター量が増加し、このリターがコケを覆ってその光合成を妨げたこと、が考えられます。

 

 

(重要な成果)

以上の結果より、山岳地帯のコケは地球温暖化の影響を強く受ける可能性があることがわかりました。今後の環境変動、特に温暖化が生態系への影響を評価する上で、山岳帯のコケに着眼した研究が重要になっていくでしょう

 

 

 

 

調査地(中央アルプス 標高2600m)
実験の様子(オープントップチャンバー)
調査地の主な種:イワダレゴケ
温暖化実験1年後の種数・被度の変化
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