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「コケの多様性」を効率的に評価する

 

(背景)

「都市の生態系」のところで紹介したように、都市域における生物保全の重要性が高まっています。しかし、コケのような小さく、野外での同定が難しい生物の場合、その多様性を把握するだけでも大きな手間がかかります。効率的にコケの多様性を評価するためには、どうしたらいいのでしょうか。

 

(目的)

簡易なコケ多様性評価手法を提案するため、私は野外でも認識しやすいコケの形(生育形)に注目しました。一見すると、どんな意味があるか分からないコケの形ですが、実は、光や水を効率よく利用できるような形になっており、周囲の環境と密接な関係があります。そのため、コケの形が緑地環境の指標となり、間接的にコケの多様性を推測できるのでは、と考えました。

 

(結果)

まず、コケの生育形とコケ多様性との関係を解析したところ、一部の生育形(扇形・ペンダント形など)のコケが出現する緑地では、コケの多様性が非常に高いことが分かりました。これらの生育形に共通する特徴として、「木の幹からぶらさがるなど、大気にさらされやすい形をしていること」が挙げられました。

 

(考察)

まわりの大気と接する面積が大きい生育形ほど大気の影響を受けやすく、乾燥に敏感に反応すると考えられます。この関係を考慮すると、上記の結果は、一部の生育形が乾燥化の程度の指標となり、間接的に、乾燥化の影響を受けやすいコケの多様性の評価につながった、と解釈できます。

そこで、これらの生育形を指標とした「コケ多様性推測モデル」を考案したところ、高い精度でコケの多様性を評価できることが分かりました。

 

(重要な成果)

木や草と比べて、同定が難しいコケはどうしても研究やモニタリングの対象になりにくくなってしまいます。しかし、野外で分かりやすいコケの生育形を指標とすることで、効率的にその多様性を評価できます。

 

コケの生育形を用いた環境評価やモニタリングは、市民によるモニタリング活動や、コケの調査を始めてみたい方にとって、有効なツールになるでしょう。

 

 

キダチヒラゴケ:生育型は扇形
ホソバオキナゴケ:生育型はクッション形
キヨスミイトゴケ:生育型はペンダント形
ジャゴケ:生育形は葉状形
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