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どこにコケはある?

家から一歩外にでて、しゃがんでみると・・・

 

あるときは岩陰にひっそりと、あるときは草に覆われつつ健気に、

またあるときは日が照りつけるアスファルトの上でたくましく・・・

 

いろいろな顔をしたコケに出会えます。

 

ただ、全てが、みずみずしく、かわいいコケではありません。

干からびてクシャクシャになってしまったコケや、

砂ぼこりに埋もれて黒ずんでしまっているコケもあります。

 

でも、どれも小さいながらも一生懸命に生きていて、とてもステキな顔をしています。

 

身の回りにあるコケの小さな世界。

そこには、心がホクホクするような発見で満ちています。

 

このコケの秘めたる(?)魅力を伝えるべく、

ここでは、「散歩で出会った身近なコケの風景など」を紹介していきます。

4月 林床でかがやく「タマゴケ」

森はまだ冬の面影が残り、茶色一色だが、足元をみると・・・

コケがエメラルドグリーンに輝いている。

木々の芽吹きがまだみられない早春、ここぞとばかりにコケは新芽を出す。

 

林道わきの、少し土が崩れているようなところを注意深くみると、タマゴケが大きな群落をつくっていることが多い。

 

タマゴケはその名のとおり、 「玉のような丸い形をしたコケの花」をもつ。

このコケの花をルーペでみると、まるで目玉のよう。

どこかでみたことがあるような目玉・・・そう、漫画「ゲゲゲの鬼太郎」にでてくる目玉の親父にそっくりなのだ。

 

タマゴケの魅力は、愛嬌のあるコケの花だけではない。

 

コケ本体は優しげな緑をしており、早春にはその美しさが際立つ。

 

 

まだ他の植物が芽吹いていない季節、

 

小さくて花は咲かなくても、コケは森の主役になる。

遠めからみたタマゴケの優しい緑
玉のような愛嬌のある蒴(苔の花)
蒴は目玉?;未成熟のため血走ったような・・・

4月 道端を小さく飾る「ヤノウエノアカゴケ」

雪が融けて日差しが暖かくなったころから、

道端に小さな赤い縁取りができる。

 

ヤノウエノアカゴケだ。

 

赤くみえるのは苔の花の柄の部分(蒴柄とよばれる)で、

ひとつひとつは糸くらいの太さしかない。

しかし、このコケはぎっしりと苔の花をつけるので、遠くからでも目立つ。

 

このコケは明るく開けた所を好み、造成地などの裸地に多い。

他の植物に先がけて裸地に侵入し、急いで胞子を散布して、

環境が安定して草が生い茂るころには消えてしまう。

 

光をめぐって草や木と争っても、小さなコケには勝ち目はない。

それゆえ、小さな体を生かした「素早い進入・撤退」に力を注ぐことで、たくみに他の植物との争いをさけているようだ。

 

よくみると、ヤノウエノアカゴケは市内の中央分離帯のいたるところにある。

 

コケは健気に、したたかに、そして、たくましく生きている。

中央分離帯を赤く彩るヤノウエノアカゴケ
近づくと・・・
蒴はまだ未熟で緑色をしている

4月 みずみずしい「コツボゴケ」

北海道にも遅い春が訪れて、いたるところで「みずみずしいコケ」をみかけるようになった。

 

身近にあるコケの中でも、特にみずみずしいのが「コツボゴケ」だ。

 

公園、空き地、庭の片隅…少し湿り気のありそうなところに生え、大きな群落をつくることも少なくない。

 

近くに誰もいないとき、こっそり地面にはいつくばって、

目線をコツボゴケにあわせてみよう。

 

透き通った葉がキラキラ輝いている。

 

いつもの生活のなかで、こんなにも美しい景色が潜んでいることにハッとする。

 

しゃがんでみることで、コケの世界がみえてくる。

コツボゴケ群落。苔の花(胞子体)が目立つ
コツボゴケ。透き通る緑色が、キラキラしている。

4月 蛇の皮にそっくりの 「ジャゴケ」

森をあるいていたら、エノキダケのようなものが目に入ってきた。

 

ジャゴケの苔の花(胞子体)だ。

 

ジャゴケは日陰の湿ったところで多くみられる、タイ類の1種。

ジャゴケ=蛇苔。

蛇の皮にそっくりの姿が印象的だ。

 

蛇と聞いて、「ちょっと無理」と感じた方は、「ワニ革みたい」と思ってみよう。

何となく親しみが沸いてくるかもしれない。

 

春と秋は苔の花(胞子体)が多くみられる季節。

コケは大きくセン類、タイ類、ツノゴケ類の3つに分けられるが

この3タイプはいずれも見た目の異なる胞子体をつける。

 

タイ類の胞子体は、透明感があってみずみずしい。

ジャゴケの胞子体。まるでエノキダケ(?)
ジャゴケ。その名の通り、蛇の皮のようだ。

4月 ツンツンした水辺の「ミズシダゴケ」

乾燥したところにも生える・・・とはいっても、

コケはやはり湿ったところに多い。

 

水辺のコケはやはり生き生きとしている。

 

「ミズシダゴケ」は水際、とくに渓流沿いで多くみられるコケだ。

植物体の先がツンツンして、まるで小さなヤリのよう。

水しぶきがかかるような岩に大きな群落を作るので、遠くからみても分かりやすい。

 

渓流にコケがあると、感じる清涼感もひとしお。

初夏にもう一度訪れたい場所だ。

 

ミズシダゴケ群落。水辺に生える。
ミズシダゴケ。茎の先が槍のようにツンツンしている。

5月 その姿はまさに海老「エビゴケ」

コケには、その姿を動物に見立てられて名前がつけられたものが多くある。

 

ネーミングセンスが特に光っているコケの一つが「エビゴケ」だ。

 

エビゴケはやや湿り気のある岩壁に大きな群落をつくる。

やや光沢があるせいか、遠目からは少し銀色に輝いているようにもえる。

 

エビゴケをよくみると、茎の先端についている葉(雌包葉)の先端が糸のように長く伸びている。

 

 

この糸を触角にみたてると・・・

 

緑色をした小さな「エビ」がみえてきませんか?

 

 

海老のような形のエビゴケ
拡大すると・・・エビに納得。

5月 小さな椰子の木「フロウソウ」

 

コケには実はいろいろな形がある。

なかには、皆さんがコケだと思っていなかった植物が

実はコケだった!ということもあるかもしれない。

 

こうしたコケの1つが「フロウソウ」である。

 

見た目も名前も「草」なのだが、れっきとした「コケ」だ。

 

よくみると、まるで小さな椰子の木のような形をしていて、

なんだかかわいい。

フロウソウ群落。水辺に多い
フロウソウ。草のようにみえるが、コケ

5月 糸瓜(へちま)みたいな?「ヘチマゴケ」

春と秋は多くの種類のコケが苔の花(胞子体)を出す季節。

 

道端などややオープンなところにはヘチマゴケの大きな群落から、

無数の胞子体がでているのをよく見かける。

 

「ヘチマゴケ」の名は蒴の形がヘチマに似ていることからついたようだ。

 

蒴を拡大すると、たしかに、へチマのようだ。

 

近縁種に「ケヘチマゴケ」があるが、こちらは茎先に糸状の無性芽(むかご)をつける

ことから区別できる。

 

 

 

 

道端に群生するヘチマゴケ。
ヘチマゴケの蒴。その形はヘチマ?

5月 林にあるミズゴケ 「ホソバミズゴケ」

山野荘の栽培などで使われるミズゴケ類。

「ピートモス」の名前で販売されていて、こちらの方がなじみがあるかもしれない。

 

ミズゴケ類は一般には湿原のような水が豊富なところに生えるが、

1-2種ほど、林床に生える種類がある。

その1種がホソバミズゴケ。

 

地面にむかってる枝が長く垂れ(下垂枝)、モコモコしている。

 

ちなみにミズゴケ陸湿原は寒い地域に発達し、

地球の陸地の3%程度の面積をミズゴケ湿原が占めている。

そして、このミズゴケ湿原が、なんと!全世界の地上の33%の炭素を蓄積している。

 

やはりコケはコケにできない?

ホソバミズゴケ群落。ミズゴケだが、林内に生える
ホソバミズゴケ。モコモコしている

5月 コケといえばやっぱり「ウマスギゴケ」

「どんなコケを知っていますか?」と聞くと、

ほぼ確実にでてくるコケがある。

 

「スギゴケ」「ゼニゴケ」「ヒカリゴケ」はもっとも有名なコケの御三家だ。

 

一般にスギゴケといわれているものは

ほとんどが「ウマスギゴケ」だろう。

 

庭園でみられるスギゴケも多くはウマスギゴケだ。

 

ただの「スギゴケ」もあるが、おもに中部~東北以北のやや寒い地域に分布していて、低地で見かけることはほとんどない。

 

スギゴケはその名の通り、杉の実生のような形をしている。

 

庭園に生えているイメージが強いコケだが、

野外では「湿った明るい場所」に大きな群落をつくっている。

 

ウマスギゴケはなぜ「うま」なのだろう?

胞子体の帽をみると・・・フェルトのような毛が生えている。

まるで、馬のたてがみのようだ。

「ウマ」という名に少し納得する。

 

スギゴケの雄は花のような器官(雄花盤)をつける。

 

ウマスギゴケ群落。明るく湿ったところに多い
ウマスギゴケ胞子体。フェルトのような毛は馬のたてがみを彷彿させる?
ウマスギゴケの雄株。コケだけど花のよう。

5月 逃亡者?の「ヒョウタンゴケ」

人と同じように、コケにもいろいろな生き方がある(生活史戦略)。ここで紹介するヒョウタンゴケの生き方は「逃亡者」。なんだか、とても可哀そうなネーミングだが、その生き様はとても合理的だ。

 

ヒョウタンゴケは、他の植物がはびこる前の荒れ地などにいち早く侵入し、一気に生長して繁殖する。そして、遷移が進んで荒地が草木に覆われ始めるころには、すでにその場所から消えてしまっている。しかし、この間にまかれた胞子の一部は、新しい荒地に定着し、同じように木や草がはびこるまでの間、この場所を占めることになる。

 

この「木や草を避けているような生きざま」が「逃亡者」にたとえられたよう。

 

植物体の大きな木や草との争いを避け、小さな身体と短い成熟期間を生かして木や草が生えられない所に次々と活路をみつける・・・この生き方には学ぶところが多そうだ。

 

ヒョウタンゴケの群落。裸地に多い
ヒョウタンゴケの蒴。ヒョウタン?

6月 春山のコケ「ハリスギゴケ」

6月になり、北海道では山地の雪が融け始めた。

付近の山に登ってみると、木がほとんど生えていない荒涼とした景色の中、見渡す限りあたり一面にハリスギゴケが生えていた。

 

「木が生えていないような、標高の高いところにもコケはありますか?」という質問を受けることがある。

その答えは、実際に山に登ってみると良く分かる。標高が高いところにもコケはある。

それどころか、優占種になっている場合も多い。

 

 

土壌が発達しない高山の岩場では、なかなか木や草が定着できない。定着できても、土壌が少ないとすぐに乾燥して枯れてしまう。

しかし、体の表面から水を吸収して生活し、おまけに干からびても枯れることがないコケにとっては、高山の岩場ですら、格好の生育場所となるのだ。

 

 

木や草ほど進化していないと思われがちなコケ。

しかし、別の視点からみると、根やクチクラを発達させることで「乾燥しない能力に磨きをかけた」木や草とは異なり、コケは「乾燥に耐える能力に磨きをかけた」ことで、巧みにニッチを獲得した植物、ともいえるのだ。

ハリスギゴケの群落
ハリスギゴケの胞子体。
ハリスギゴケの雄株。

6月 小雨で輝くコケ

しとしと雨はコケを一層美しくする。

 

写真はコケの調査中に撮影したもの。

コケの鮮やかな緑がつくりだす幻想的な光景に息を飲んだ。

 

高さ10メートル近くある左右の岩壁には、エビゴケ、スジチョウチンゴケ、エゾチョウチンゴケ、コマノヒツジゴケ、ジャゴケ、などがところ狭しと生えている。

 

雨の合間、岩壁の底に光が差し込んだとき、新緑を背景にして、コケの緑が一際輝いた。

 

コケが好きになると、雨が楽しくなる、というおまけがついてくる。

コケに覆われた岩壁

7月 コケのもつ清涼感

コケに涼しげなイメージをもつ人もいるのではないだろうか。

コケの葉には透明感があり、みずみずしいためだろう。

 

写真は新緑と清流、そして、岩壁をおおうコケ(主なコケはエビゴケ)。

 

木々の緑が水面に映り、あたり一面が緑色に染まっていた。

コケが清涼感をもたらす

7月 コケは緑色だけではない「ムラサキミズゴケ」

コケというと、どうしても緑色をしているイメージがある。ただ、緑色といっても深緑色から、光沢のある緑まで、さまざまだ。

 

しかし、中には緑色の範囲を大きく超えて、赤色や白色にみえるコケもある。

 

ムラサキミズゴケはその1種だ。ムラサキといっても実際は赤みがかってみえる。寒冷地の湿原に大きな群落をつくる。

コケのつくりだす「赤」も、やはりどこか優しいをしている。

ムラサキミズゴケ:寒冷地の湿原に生える

8月 高山のコケ 「シモフリゴケ」

高山のような厳しい環境に生えているコケは、さまざまな戦略を駆使して環境に巧みに適応している。

写真のコケはシモフリゴケ。霜降りの名のごとく、まるで霜がおりたように全体が白みがかってみえる。なぜ白く見えるかというと、葉の先に葉緑素を欠く、白い針状の部分があるためだ(透明尖)。

 

この白い透明尖は、高山の強い紫外線を防いだり、体内からの水の蒸発を少しでも遅らせられる効果がある。

たかが小さな透明尖といっても、その効果を甘くみることはできない。透明尖を切断する実験をしたところ、体内の水の蒸発量が30%近くも高くなったそうだ。

 

小さなコケにとっては、微小な身体のつくりの差異であっても、大きな環境適応効果が生じる。

そのため、コケの体には環境への適応の知恵がたくさんつまっているのだ。

主に高山に分布するシモフリゴケ
シモフリゴケの透明尖

8月 苔のつく地名 「苔平」

桔梗ヶ原、百合ヶ丘・・・のように花の名を冠した地名はよく聞くが、「コケ」がついた地名は極めて少ない。

しかも、「コケ」がついた地名を訪れても、期待に沿わず、コケがそれほどみられないことが多い。

 

先日、苔平(長野県飯田市)を訪れたが、これまでの事例と同じく、コケがそれほど多い場所ではなかった。

しかし、苔平から数百メートルほど離れたところでは倒木上にコケが密生し、美しい景観をつくっていた。

 

ひょっとしたら「苔平」も名づけられた当時は、コケがところ狭しと生える場所だったが、それが、環境の変化などで、今ではすっかりコケが衰退してしまったのだろうか?

 

それとも、最初に名づけた人が、付近にめぼしいものがなかったため、コケくらいしか地名に使えなかったのだろうか。

苔平;シノブヒバゴケが多い
苔平付近;倒木上にコケが茂る

8月 登山道のコケ 「セイタカスギゴケ 」 と 「コセイタカスギゴケ」

登山道を歩いていると、スギゴケのようなコケを見ることが多い。

その主なものは「セイタカスギゴケ」と「コセイタカスギゴケ」だ。他にも「フウリンゴケ」「オオスギゴケ」なども見る機会が多い。

 

これらは、いずれもスギゴケの仲間だ。

 

セイタカスギゴケとコセイタカスギゴケはよく似ているが、

 

1.セイタカスギゴケの方が大きく、乾燥すると強く巻縮する

2.コセイタカスギゴケはやや葉が平らにつく

 

ことで区別できる。

 

セイタカスギゴケは20cm近い大きさの個体もある。

日本でもっとも大きなコケの一つだけあって、さすがに堂々とした風格だ。

セイタカスギゴケ
コセイタカスギゴケ

8月 「苔ブーム」について:「ジンガサゴケ」を例に

最近、コケに関する問い合わせが多くなり、コケの展示、観察会の情報も目にする機会も増えた。私がコケを研究し始めた頃は、コケを気にするのはごく一部の方だけだったのだが・・・じわじわと、しかし着実にコケブームがきているようだ。

 

8月18日の読売新聞の朝刊でコメントさせて頂いたが、このブームには、身の回りの自然への関心の高まりや、登山ブーム、そして、インターネットやデジカメの発達によって「コケの魅力」に接する機会が増えたことが関係しているように思う。

 

「美しいコケは、屋久島まで行かないと見られない」、ということはない。しゃがんで小さなコケをじっくりみれば、身のまわりに美しい「コケ」の世界が広がっていることに気がつく。

 

例えば・・・街中でもよくみられる「ジンガサゴケ」。一目すると、その姿はべちゃっとしていて、魅力のかけらも(?)感じないかもしれない。でも、目線をコケにあわせると・・・その愛嬌ある姿がみえてくる。

 

「身の回りにあるけれど気がつかないコケの奥ゆかしい美しさ」

 

このどこか「宝物をみつけるような感覚」も、ひょっとしたら、コケの魅力の一つなのかもしれない。

各地で行われるコケ展(写真は京都府立植物園)
ジンガサゴケ。その名の通り、陣笠のようなコケの花をつける

8月 コケを知ると景色が違ってみえる「アオハイゴケ」

今週末(23日)、進化学会の一般公開シンポジウム(東京;中央大学)でコケに関する発表があり、この発表に使う写真を撮ろうと大学付近を少し散策した。

 

普通に歩いていたら、サクサクと通りすぎてしまう道。

 

でも、しゃがんでみると・・・わずかに霧がかかった水面を背景にしてアオハイゴケがしっとりとした色合いになり、当たり一面にはピンとした空気が張り詰めていた。

 

何気ない道でも、目線をコケにあわせれば、いつもの視点では気がつかなかった小さなコケの世界が広がっている。

 

 

同じ風景をみていても、コケから、見えてくるものがある。

コケ越しにみる水面には薄霧がかかっている
アオハイゴケ。水辺の岩に大きな群落をつくる。

8月 いつもとは赴きが異なる?「ウマスギゴケ」

コケ庭の代表種であるウマスギゴケ。

しかし、もちろん、本来の生育場所は庭ではない。

 

ウマスギゴケは野外では明るい湿地に多くみられる。

乾燥に強いといっても、やはり湿った場所を好むようだ。

 

写真は野生のウマスギゴケ。

この場所はウマスギゴケの生育に適しているため、

山の中に自然のコケ庭が広がっている。

 

いつものウマスギゴケと比べてみると・・・どうだろう?

なんだか違った印象にみえないだろうか?

 

本来の生育地の環境を庭で再現できたとき、

輝くようなウマスギゴケのコケ庭になるのだろう。

野生のウマスギゴケ。
ウマスギゴケ。みずみずしい。

8月 高山のコケ 「サキジロサンゴゴケ」

今、北アルプス、中央アルプス、南アルプスの山岳地域でコケの調査を行っている。


冷涼な高山では、低地ではみられない種が分布している。「サキジロサンゴゴケ」もその1種だ。葉が白色の細胞で縁どられているため、全体的に白味がかってみえる。形は「棒」のようで、一見するとコケだと気がつかないかもしれない。


こうした「色」や「形」も、高山の厳しい「強光・乾燥」への適応だと考えられる。

光を吸収しにくい「白色」は強い光環境下で、また、水を失いにくいクッション状の群落をつくる棒状の形は乾燥しやすい環境下での生育に適しているためだ。

 

巧みな環境適応を知れば知るほど、小さなコケにますます感心してしまう。

サキジロサンゴゴケの群落。コケに見えない?
サキジロサンゴゴケ。一つ一つは棒のよう。

8月 街でみたコケインテリア「カガミゴケ」

コケというと、以前は盆栽の下にちょこっと植えてあるイメージだったが、最近は「ちょっとオシャレなインテリア」になっている。

 

調査の関係で長野県内を移動しているとき、とある待合室でコケを用いたインテリアを見つけた。

 

壁一面に乾燥したコケ(実物)を張り、そこに木や草、シダの模型をはめ込んである。白い壁にコケの緑が際立ち、清潔感ある、品の良い空間に仕上がっていた。

 

ここで用いられているコケはカガミゴケだろう。ハイゴケと違ってカガミゴケはややツヤがあり、平たい形をしている。偶然なのか、意図的なのか分からないが、カガミゴケを使ったことで、コケのカーペットが平面的になり、すっきりしたデザインになっている。

 

「このインテリアに別のコケを加えたら、どんなデザインになるかな」と考えながら、じっくり見入っていた。

某待合室でみたコケインテリア
インテリアの拡大。カガミゴケ

9月 駐車場の片隅にある「ギンゴケ」

夏も終わり、いよいよ秋になり、コケの美しさにも磨きがかかってきた。秋のコケは、どこか寂びしげな色をしていて、わび・さびの言葉が良く似合うように思う。

 

ここで紹介するギンゴケは、街のいたるところでみられる・・・駐車場の片隅から、家のブロック塀、アスファルトの割れ目にまで生えることがある、乾燥に大変強いコケだ。

 

「ギンゴケ」という名は、葉の上半分が白く、銀色に輝いてみえるためだろう。しかし、実際は白味がかった、柔らかな緑色に見えることが多い。

 

ギンゴケの群落の中をよく探すと、少し前に「かわいい」と話題になった(?)クマムシがいることがある。

 

小さなクマムシにとってみたら、ギンゴケの群落も大きな森にみえるのだろうか。

駐車場の片隅にひっそり生えるギンゴケ
ギンゴケ。優しい緑色をしている

9月 2つの顔をもつコケ「ヒジキゴケ」

コケは種の同定が難しいものが少なくない。この理由のひとつに、「乾燥したときの形」と「湿ったときの形」が大きく変わることが挙げられる。

 

スーパーでパックで販売されている「乾燥ワカメ」を想像してみよう。売っているときは、黒味ががったカリカリした形のワカメだだが、お湯につけた瞬間に深緑色の、平たくてピンとしたワカメになる。

 

コケはこれに似ている。

 

ワカメの話題を出したので、ここでは「ヒジキゴケ」を例にあげてみる。

 

乾燥したときは、たしかにヒジキのようにみえる。しかし、水を含んだ瞬間、白味がかった色は黄緑色へと変わり、棒状の茎や枝はふわっと広がって、まるで別の種のようだ。

 

湿ったヒジキゴケには、もはやヒジキの面影はない。

 

「乾燥した姿」になったり、「湿った姿」になったり、コケの毎日は思ったよりも忙しいのかもしれない。

ヒジキゴケ(乾燥)。たしかにヒジキのようだ。
ヒジキゴケ(湿潤)。もうヒジキとは呼べない。

9月 コケの美しい季節

よく聞かれる話題の一つに「コケが美しくなる季節はいつですか?」というものがある。

 

これは人の好みそれぞれだが、私は「秋のコケ」をみるのが好きだ。

 

夏ほど乾燥しておらず、また、気温もそれほどひくくないせいか、秋のコケはいつにも増してしっとりしているようにみえる。

 

さらに、コケの「鮮やかな緑」と「色とりどりの紅葉」でつくられる風景の美しさについては、ここで説明する必要がないだろう。

 

北海道ではサクラの葉が色づき始めた。

 

今年もそろそろ、自分の好きな「コケの季節」がやってくる。

色とりどりの紅葉に飾られたコケ庭
オオシッポゴケと紅葉

9月 近くに潜むコケの名所

調査をする機会があって、普段はあまり人が訪れない谷に入った。

最初はそれほどコケが多くはなかったのだが、谷のある場所にくると視界の先にコケの世界が広がっていた。
一面コケに覆われた左右の岩壁が奥へ奥へと続いていく。

谷の入り口からは想像できなかった幻想的な光景だ。

 

小さなコケは微環境の影響を強く受ける。

 

例えば、となりあった場所であっても、日陰と日向では温度・湿度ともに異なる。このように、微環境は、わずかな距離の中でも大きく変化するため、ほんの数メートル歩くだけでも、生えているコケがガラリと変わるのだ。


いつもの通勤路や通学路のすぐそばにも、実はコケの名所が隠れているかもしれない

入り口付近。コケはそれほど多くない
谷の深部。左右の岩壁がコケに被われる

9月 天使のハシゴが降りた「オオミズゴケ」

「天使の梯子(ハシゴ)」は、正式には薄明光線、とよばれている。

これは雲間や霧の中から光が射し、光の柱が降り注いでいるようにみえる現象で、この「光の柱」が「天使のハシゴ」に例えられている。

 

渓谷の川を歩いているとき、運よく、天使の梯子がコケ(オオミズゴケ)の上に降り注いでいる光景に出会った。

 

木々の隙間からみずみずしいコケ群落にまっすぐに伸びた光のハシゴ。目を凝らせば、小さな天使がこのハシゴを降りてくる姿が見えそうだ。

 

光とコケは、いつも美しい共演をみせてくれる。

天使のハシゴ(薄明光線)
天使のハシゴが降り注いだオオミズゴケ

9月 天空のコケ庭 「シモフリゴケ」と「ヤマコスギゴケ」

コケ庭は人によって作られたものだけではない。自然も美しいコケ庭をつくってくれる。

 

山の上、湿原、渓流の岩壁、さらには硫黄泉にまで、ときには「誰か人が作ったんじゃないか?」と見間違えるような美しい「自然のコケ庭」があることもある。

 

写真は、とある山頂付近に広がる自然のコケ庭。コケ庭タイプ(著書;苔三昧参照)に分類するなら「石や木のアクセント」タイプになるだろうか。深い霧の中、原生的な雰囲気が漂う。

 

主な種はシモフリゴケで、ヤマコスギゴケがところどころに生える。晴れているときは、白いシモフリゴケが太陽の光を反射して、辺り一面が金色に輝いているようにみえる。

 

自然のコケ庭めぐり。

 

コケの新しい魅力を見つけられる機会になりそうだ。

天空のコケ庭
ヤマコスギゴケ。山地に多いスギゴケ類の1種

9月 生態系の中のコケの役割 「イボカタウロコゴケ」

いつもはあまり目立たないコケだが、生態系の維持、言い換えれば自然環境の維持に大きく貢献している。

 

コケにはいろいろな役割があるが、その一つに「土砂の移動を抑えて、他植物の侵入を促す」というものがある。

 

体の表面から水や栄養縁類を吸収するコケは、土壌が発達していないような荒地や壁面でも生えることができる。荒地にコケが生えることで、土砂が直接雨に打たれたり、風などで移動したりすることが防がれる。こうして環境が安定し、木や草が芽吹く基盤が整うのだ。

 

写真の土壁は一面びっしりコケが被っている。ここでは、小型のタイ類(イボカタウロコゴケなど)が多くみられた。これなら少しくらい強い雨が降っても土砂が流れでることもないだろう。

 

こうしたコケの働きをしると、何気なく生えているコケへの印象がちょっぴり変わるかもしれない。

コケに覆われる土壁。小型タイ類が密生する
イボカタウロコゴケ。多肉植物のようでかわいい

9月 苔のテーブル 「クサゴケ」

湿ったところにあり、かつ、あまり使われていない木のテーブルの上にコケはよく生える。コケにとってみたら、「朽木の上」に生えているようなものなのだろう。

 

朽木の上ではコケと他の生物との間に興味深い関係が成り立っている。

 

・コケが朽木の上に生えることで、朽木表面の湿度と温度を保つ。

 

・そしてこの湿度と温度によって、朽木を分解する菌類や関連する微生物の働きが活発になり、多くの二酸化炭素を放出するようになる。

 

・こうして放出された二酸化炭素をコケが利用し、コケの成長速度が高まる。

 

朽木の上でみられる生物間の絶妙な関係。一見すると他の生物と無関係に生えているようにみえるコケだが、決してそうではないのだ。

 

生物のつながりにはいつも驚かされる。

苔におおわれたテーブル:主にクサゴケが生える
クサゴケ:明るい黄緑色の大型のコケ

10月 コケの紅葉?「(アキノ)フロウソウ」

秋も深まり、北海道ではストーブが入った。

 

よく聞かれることの一つに「コケにも紅葉がありますか?」という質問がある。

 

残念ながら、コケに紅葉はない。

ただ、春先エメラルドグリーンだった新芽が深緑色になったり、しっとりとした色合いになったり、一年生のコケが枯れて茶色くなったりすることはある。しかし、これらは「紅葉」への期待とはちょっと異なる。

 

・・・ところが、ある場所で、まるで紅葉しているかのようなフロウソウをみつけた。この群落は夏は一面緑色だったはずなのだが、今はほのかに赤味を帯びて可愛らしくみえる。茶色がかったフロウソウはよく見るが、ここまで赤味が強い個体はあまりみない。

 

これが環境の影響なのか、生育状態によるのか、遺伝子による変異なのか、分からない。可能性は高くはないが、もし変異だったら、園芸植物として考えれば、これはフロウソウの「一つの品種」になるのかもしれない。

 

そのときは「アキノフロウソウ(秋の不老草)」となるのだろうか。

フロウソウ:本来は緑色なのだが。
フロウソウ:柔らかな赤味を帯びている

10月 コケの橋「ネジクチゴケ」

ある城下町に出張があった。

用事を終えた後、帰るまで少し時間があったので、ぶらりと街を散歩した。

 

城下町には、情緒あふれる庭園が多い。

たとえコケ庭ではなくても、美しいコケの景色が随所に隠れている。

 

散策の途中に立ち寄った庭はコケ庭ではなかったが・・・じっくりみると、いたるところでコケが庭園を飾っている。

 

ナミガタタチゴケ、ハイゴケ、ホソバオキナゴケ、ナガヒツジゴケ・・・コケ庭のよくある顔ぶれだ。

 

ふと庭の隅に目をやると、「苔の橋」があることに気がついた。

 

あまり使われなかった橋にいつの間にかコケが生し、今は、「コケのための橋」として大切にされているのだろう。

 

なお、この橋の主なコケは「ネヂクチゴケ」だ。

城下町でみた庭園
コケ(ネジクチゴケ)で被われた橋

10月 コケのムック?「ネズミノオゴケ」

森を歩いているとき、ネズミノオゴケの群落をみつけた。

 

どこかでみたことがあるような・・・なんだろう?

ネズミノオゴケの群落の上に近くで拾った栗を2つ乗せたら、ピンときた。

 

ムックだ

 

そう、これはネズミノオゴケでできたムックなのだ。

 

ネズミノオゴケはその名の通り、「ネズミの尾」のような形をしており、見ようによっては毛糸のようだ。

 

この質感といい、群落の形といい、ネズミノオゴケでムックがリアルに再現されている。

 

森の中で見かけたムックにほっこりしてしまった。

コケのムック?
ネズミノオゴケ

10月 コケと落ち葉

自分の調査地の一つに「八ヶ岳」がある。

2010年から毎年数回、コケの調査をしている。

 

山岳地域の標高の高いところ、いわゆる「亜高山帯」ではコケの被度が大きい。これにはいろいろな理由があるが、その一つに「亜高山帯では針葉樹林が発達しており、落ち葉が少ないこと」が挙げられる。

 

小さなコケにとって、落ち葉はかなり危険な存在になる。落ち葉に厚く覆われてしまうと、日照不足になり、枯れてしまうためだ。

 

針葉樹の葉は線状で細く、広い広葉樹の葉と違って、コケを覆いつくすことはない。さらに、亜高山帯の針葉樹では葉が数年にわたって枝についているため、落葉量そのものも多くない。こうした環境から、亜高山帯では、大きなコケ地が発達しやすい。

 

秋も深まり、八ヶ岳にも冬の足音が聞こえてきた10月中旬、針葉樹とコケで「緑一面の亜高山帯」から、広葉樹の紅葉と落ち葉で「赤一面の山地帯」を歩いた。

 

しかし、この緑も赤も、あと一月もすれば、いずれも雪で「白一面」になる。

亜高山帯の森林。林床はコケで覆われる
山地帯の森林。林床には落ち葉が積もる

10月 コケと紅葉

一つ前で、 「落ち葉はコケにとって大敵」書いたが、私たちからみると「コケと紅葉」の組み合わせは美しい。

 

緑のコケの上に赤や黄色の紅葉が降り積もっているだけで、身近な景色すら絵になってしまう。

 

「緑」と「赤」と「黄色」。

もし、こんな色の服をもらっても、着こなすには相当のセンスがいるだろう。

でも、コケはいとも簡単にコーディネートして、秋らしさを演出してしまう。

 

北海道では紅葉もだいぶ進み、冬の気配が感じられるようになった。

 

初冬のコケはどんな装いをみせてくれるのだろう。

水辺のコケと紅葉:アオハイゴケなど
倒木上のコケ:ネズミノオゴケなど

10月 北海道にもコケ庭が?

著書、苔三昧では「北海道ではコケ庭が少ない」と書いたが、決してないわけではない。

 

写真のコケ庭(北海道:函館)では、一面、コツボゴケが広がり、美しいコケ庭となっている。池泉と築山の起伏を巧みに利用した優雅なデザインには都の香りすら感じる。

 

北海道の気候風土を反映して、この庭では冷涼な地域に分布する種が随所にみられることも興味深い。

 

コケ庭の多くは当初はコケ庭ではなかったものが長い年月をかけてコケ生す庭へと変わってきたもので、自然に侵入したコケを活用している。そのため、地域の自然や気候風土の特徴がコケ庭には反映されやすい。

 

少し専門的になってしまうが、地域の自然・文化との関係を考えながらコケ庭を鑑賞するのもまた面白い。

園内より:手前のコケはトヤマシノブゴケ
室内からの眺め:主にコツボゴケがみえる。

10月 ブナ林のコケ「オオギボウシゴケモドキ」

ブナ林も紅葉がすすみ、すっかり秋の装いになった。

 

コケは木の幹にも生えるが、その種類や量は樹種ごとに異なる。例えば、滑らかな/凹凸のある樹皮の違いとコケの関係を考えてみよう。

 

垂直な木の幹に胞子がひっつき、雨風に流されずに生長を続けていくのは容易ではない。そのため、滑らかな樹皮よりも、表面に凹凸のあるごつごつした幹の方が胞子が樹皮上にとどまりやすく、コケもつきやすい。

 

ブナは滑らかな樹皮をしており、コケは侵入しづらそうだ。若いブナの樹皮にほとんどコケが生えていないのも、きっとこの樹皮の滑らかさが関係している。

 

でも、そんなブナにも巧みに侵入し、たくましく生長しているコケもある。ブナの滑らかな樹皮にある、かすかな隙間に侵入することに成功し、風雨に耐えて大きくなってきたのだろう。

ブナの樹幹
オオギボウシゴケモドキ

11月 コケと城跡

趣味の一つに、古城めぐりがある。

 

なかでも、寂れた山城に心惹かれる。自然の地形をどのように生かし、どのような攻めを想定して築城したのか、また、攻め手はいかにして攻略しようとしたのか、考えるのが面白い。

 

一見コケとは関係ないように見える城跡だが、意外にも城跡にはコケが多い。長い年月を経てコケに覆われた石垣には、わびさびに通じた趣がある

 

ただ、鑑賞目的で作られた庭園とは異なり、多かれ少なかれ、城址には悲哀に満ちた歴史が秘められている。この歴史のせいか、城址の「コケ生す風景」にはどこか哀愁が漂っているように感じてしまう。

 

なお、備中高松城と筑前岩屋城では、落城の際にコケにちなんだ辞世の句が詠まれている。目前にせまった死をみつめながら、城主たちはどのような想いでコケをみたのだろうか。

城跡の石垣とコケ(岐阜県)
城跡の石垣とコケ(長野県)

11月 コケと死生観

一つ前で「コケと辞世の句」に触れたので、少しだけ補足する。

 

辞世の句にコケが詠まれたのは、偶然ではない。

 

実はコケは日本人の死生観と密接な関係がある。現代では用いられないが、古来より日本では、「苔の下」という組み合わせてで、「土の下」、すなわち死後、とう意味で広く使われていた。つまり辞世の句に「コケ」を入れることで、暗に自分の死後が示唆されているのだ。

 

振り返って、現代人の我々にとって、死生観と関連が深い植物といえば、桜ではないだろうか?しかし、このように桜が主流になったのは大正期以降のようだ。一斉に咲き、パッと散るサクラは、当時の社会状況のなかで、死と重なったのだろう。

 

コケと桜・・・一方はわび・さびの、また、もう一方は華やかさの象徴として捉えられる対照的な植物が、ともに日本人の死生観に結びついているのは大変興味深い。

コケに覆われた墓所(長野県)
コケに埋もれるお地蔵様(京都府)

11月 コケの春はもう近い?「ノミハニワゴケ」

北海道では10月の第1週に少し雪が積もり、いよいよ冬の足音が近づいたきた。森の草木も動物も、すでに長い冬を越すための準備が整ったようだ。

 

ではコケはどうだろう?

 

よくみると・・・なんと、この時期から胞子体を伸ばし始めている種もある。

 

本当は秋に胞子を散布しようと思ったけれど、予想以上に冬の到来が早かったのか・・・それとも、今からせっせと胞子体を生長させ、雪が融けたら真っ先に胞子を散布しようとしているのか・・・種ごとに胞子の散布戦略が異なるので、どちらがこの種に当てはまるかはじっくり観察してみないと分からない。

 

ただ、いずれにしても、木や草とはわずかに異なった戦略を用いることで、小さなコケは少しでも生育・繁殖を有利にしているのだ。

 

コケの生存戦略も奥が深い。

ノミハニワゴケ。胞子体が生長をはじめている。
新鮮な胞子体、

11月 稲刈り後の田んぼ「イチョウウキゴケとコハタケゴケ」

稲刈り後の水田は一部のコケの観察に適した環境になる。

 

それはウキゴケ類だ。写真のイチョウウキゴケとコハタケゴケはウキゴケ類の仲間になる。

 

ウキゴケ類の多くは一年生のコケで、晩夏~秋にかけて出現し、翌春には消えてしまう。こうした生活史をもつ理由は、ウキゴケ類はもともとは、河川が定期的に氾濫するようなところ(氾濫原)に生育していたためだろう。

 

河川の氾濫とともに分布を広げ、他の植物が繁茂するまでに急いで繁殖し、胞子になって次の氾濫を土中で待つ。こうしたウキゴケのサイクルは水田耕作ー春に耕し水をひき、稲刈り後の秋には水を落とすーと見事にマッチしている。

 

寒風吹きすさぶ稲刈り後の水田にしゃがみこんで何かを探している人がいたら・・・十中八九、それはコケ屋さんに違いない。

稲刈り後の水田
イチョウウキゴケ(下)とコハタケゴケ(上)

11月 林床に開く小さな傘 「オオカサゴケ」

小さなコケをじっくりみたことがある人は少ないかもしれない。しかし、コケにはとても可愛らしい姿をしたものが多い。

 

「オオカサゴケ」もその一つだ。

 

オオカサゴケは温暖な地域の林に多くみられる(冷涼な地域では、やや小ぶりなカサゴケが生えている)。その名前から予想されるように、「傘」のような形をしている。

 

都合がいいことに(?)、乾燥すると縮れてしまうため、雨が降ったりして、水気があるときだけ、傘のような形になる。その姿も振る舞いも、傘にふさわしい。

 

最近はアクアリウムでもオオカサゴケが用いられているようだ。水の中では「傘」のような振る舞いは見られないが、小さな緑の花のようにもみえる可愛らしい形を常に楽しめる。

オオカサゴケ群落。
オオカサゴケ。その名の通り、傘のよう。

11月 秋のコケ庭①

コケの分析をするため、一週間ほどある研究所に滞在している。

 

実験の合間に、研究所のまわりを散歩した。すると・・・美しいコケの景色に出会えた。


秋はやはり「コケ庭」の美しさが際立っている。
この庭ではウマスギゴケを主体にして、オオシッポゴケ、エダツヤゴケ、トヤマシノブゴケなどが大きな苔地をつくっていた。

紅葉も盛りを過ぎて、コケ地の上には色とりどりの紅葉が散っていた。11月も半ばを過ぎ、季節は小雪。暦の上では、木々が葉を落とし、雨が雪へと変わりはじめる頃だ。

林床が少し明るくなったせいか、いつもよりコケ地の緑が輝いてみえた。

秋のコケ庭
オオシッポゴケに降り積もる紅葉

11月 秋のコケ庭②

天候不順のせいか、関西では今年は紅葉があまりよくなかったそうだ。

紅葉は「葉の緑色の部分(クロロフィル)の分解」と、「緑色の部分が分解されることで目立つようになった黄色い部分(カロテノイド)」、さらには「落葉前に新たに生成する赤色の部分(アントシアニン)」が相互に作用しあうことで起こる。

これらの過程は、いずれも天候や気温の影響に作用されやすい。そのため、紅葉が美しい年もあれば、そうでない年もある。


それでは、コケはどうだろう?


コケは紅葉しているわけではないので、よほどの乾燥が続いている年でない限り、秋にはしっとりした美しい色合いをみせてくれる。

しかも、深紅の紅葉と深緑のコケが組み合わさることで、芸術的な美しさが生まれる。

紅葉はいまいち・・・の年であっても、「紅葉とコケの美しさ」は期待を裏切らない。
室内から眺めた庭園
ウマスギゴケと紅葉

11月  秋のコケ庭③

「コケ」ときくと、「じめっとした」とか、「気味悪い」というような、よくないイメージを持つ人が少なくない。

では、「コケ庭」と、「コケ」の後ろに「庭」をつけてみよう。

すると、コケのイメージが「わび・さびの風情を醸し出す、 何だかとても魅力的なもの」とプラスに変わってしまう人も多いのではないだろうか。

路地裏でみるコケも、コケ庭で見るコケも、まったく違った種類ではない。でも、このように印象が変わってしまうのは、コケ庭における「コケの圧倒的な存在感」のためだろう。


最近、海外でも「コケ庭/コケ園芸 」に関する書籍の出版が相次いでいる。どうやらコケ庭の人気が少しずつ高まっているようだ。

今後、このトレンドが続くのか、それとも落ち着いていくのだろうか。これには、やはり「質(quality)」が重要なキーワードになると感じている。どこかで、この「質」について紹介したいと思う。
雲間の光に照らされたウマスギゴケ。
紅葉とヒノキゴケ

12月 コケと鳥? ヤマガラとコガラ

散歩をしていると小鳥の1種(カラ類)をよくみかける。

コケと鳥・・・一見何も関係がないようだが、実は見えないところでつながっている。

「鳥の巣材」にはコケが好んで用いられているのだ。

これにはいろいろな説があるが、有名なものとして(1)コケの保温機能 (2)コケの抗菌作用 を鳥が利用しているといわれている。  

(1)については、コケにどのくらいの保温機能があるかわからないが、少なくともフカフカのコケは、枯れ草よりは暖かそうだ。(2)について、コケは様々な抗菌性の物質を含んでおり、湿っていても容易に腐らないなどの特徴があることからも納得できる。

ふと思い立って、手の平にひまわりの種とコケの断片を載せ、野鳥がコケをもっていくか試してみた。 巣を作る時期ではなかったためだろうか、やってきた小鳥(ヤマガラ)はコケを蹴散らして、ひまわりの種だけをもって行ってしまった。

気を取り直してもう一度。今度は米粒で試しみると、別の小鳥(コガラ)がやってきた。しかし相変わらずコケは蹴散らされただけだった。
コケを蹴散らした直後のヤマガラ
コケを蹴散らした直後のコガラ

12月 コケと雪

しんしんと雪が降った翌朝、家のまえのウマスギゴケたちも雪に覆われていた。

次の大雪で・・・恐らく春までは白銀の世界が広がり、あたり一面が真っ白な雪に覆われたままになる。

いよいよ本格的な冬の到来だ。


コケに顔を近づけてみると、コケについた雪の結晶が朝日を浴びて融け、キラキラ輝いていることに気がつく。


雪に埋もれる前のわずかな間、「小さな」幻想的な光景が足元に広がっている。


雪に埋もれるウマスギゴケ
朝日を浴びて輝くウマスギゴケ

12月 春を待つコケ

時おり雪がぱらつく日が続いている。

日中、寒さが緩んだときに降り積もった雪が融け、大地が顔を出す。しかし、日に日に雪に覆われる時間が長くなっている。

雪を踏みしめながら歩いているとき、雪の中からヒョッコリ顔を出したコツボゴケを見つけた。しかも、もう胞子体を伸ばし始めている。

凍てつく寒さの中、コツボゴケは暖かい幸せな春がくるのを確信しているかのようだ。


大丈夫。必ず春はやってくる。


柔らかな春の日差しの中、そよ風にのってゆらゆらと胞子体がたなびく。そんな嬉しそうな姿が目に浮かぶ。
雪に覆われた散歩コース
コツボゴケ。すでに胞子体が伸び始めている

12月 コケと年賀状 「クジャクゴケ」「ホウオウゴケ」

今年もそろそろ年賀状の準備をする時期だ。

コケ屋さんの年賀状には、干支にちなんだコケをテーマにしたものが少なくない。しかし、このテーマの難易度は干支によって大きく異なる。

12支の中で、最も難易度が低いのは、「酉」だろう。酉にちなんだ名前をもつコケが多いためだ。少し野山を歩けば、さまざまなホウオウゴケ類が見られるし、温かい地方では「クジャクゴケ」など、見栄えのするコケも少なくない。

来年の干支は「申」。ずばり、「兎」と並ぶ、難易度が高いテーマの一つだ。

きのこなら「サルノコシカケ類=猿の腰掛」、地衣類なら「サルオガセ類=猿の尾枷」など、思いつくものがいくつかあるが、サルに直接関連した名前をもつコケがなかなか思いつかない。

コケ屋さんたちは、いったいどんなアイデアを搾り出してくるのだろうか?

今からちょっぴり楽しみにしている。

クジャクゴケ。孔雀の尾のようにふわりと広がる。
ジョウレンホウオウゴケ。属名は鳳凰にちなむ。

12月 コケと百獣の王 シシゴケとトラゴケ(オオシラガゴケ)

前項でも少し紹介したが、さまざまな動物にちなんだ名前がコケにつけられている。

龍、鳳凰、鵺(ぬえ)などの空想上のものから、ライオン(獅子)、トラなどの獰猛な肉食動物、シカ、ヒツジ、リス、などの可愛らしい動物まで、バラエティに富んでいる。

例えば、コケとはまったく縁のなさそうな百獣の王「獅子と虎」についてみてみよう。

シシゴケはおそらく、茎の先端にたわわにつける無性芽をライオンの首周りにある襟巻きに見立て名づけられたのだろう。ただ、獅子いわれなければ、「ブロッコリー」に見えてしまう。

トラゴケは旧名であり、今は「オオシラガゴケ」と呼ばれている。白みがかった色から、白髪の名前には納得するが、虎の要素はまったくみあたらない。


でも、少し心のハードルを下げて、じっくりこれらのコケを眺めていると・・・なんとなく獅子と虎の面影がみえてくる気がしませんか?
シシゴケ(獅子?)
トラゴケ(虎?)[一般名:オオシラガゴケ]

12月24日 コケとクリスマス

北の大地より・・・届け、Merry X'mas!
クリスマスカラーのシッポゴケ

1月 コケでないコケ 「クラマゴケ」

年末年始、郷里に戻った。
郷里は温暖な地域にある。家の近くには、年始からレンゲの花が咲く(子供心に)大切な場所があった。今年もレンゲの花が咲き誇り、少し早い春の訪れを告げていた。

コケ を研究し始めた頃、母が私に言ったことがある。

・・・最近、庭にコケが増えはじめた。これはきっと息子がコケを研究し始めたことが関係している。息子がコケの種を体につけてきて、それを庭にばらまいたのだろう・・・

と。

話半分に聞いていたが、ある年、じっくり家の庭をみてみると、確かにコケが増えていた。

でも・・・コケはコケでも「クラマゴケ類(クラマゴケ、コンテリクラマゴケ)」だった。コケという名はあるが、シダ植物の1種だ。一見コケのようにも見えるが、維管束をもつなど、コケとは体制が大きく異なる。

どうやら自分がコケを研究しているから、コケが増えた、というわけではないようだ。庭に水やりをよくするようになったためだろうか、水環境が改善したために以前からあったクラマゴケ類が増え、目立つようになったのだろう。

ただ、それ以前に、自分が身体にコケをひっつけてはるばる郷里まで帰ることはないよ・・・
レンゲの花
家の庭。手前にクラマゴケ類が広がる
コンテリクラマゴケ

1月 コケと花 「ハイヒモゴケ」

郷里に戻った折、祖父母の家にも少しだけ寄った。
急峻な地形のため、家は石垣の上にある。長い年月を経た石垣には、いろいろなコケがついている。 

この石垣のコケ(ハイヒモゴケなど)をみると、祖母を思い出す。もちろん、祖母がコケを教えてくれたわけではない。祖母がなくなった際、たまたまこの石垣のコケが目に入ってきて、そのときの印象が強く残っているためだ。

ある小説に「別れる人に花を一つ教える」というものがあった―花は毎年咲く。花の時期になれば、きっと、その人は自分のことを思い出してくれるだろう―と。

しかし、花と違って、コケは季節によって姿を変えない。

花のようにきれいな余韻は残らないけれど・・・もし、花の代わりに「コケを教える」としたら、季節に限らず、思い出してもらえるのだろうか。
石垣のところどころに石灰岩が使われている
石垣のハイヒモゴケ。ネズミノオゴケのように見えるが、葉先が長く伸びる。

1月 コケと歌

少し前に「花は綺麗な余韻が残る」と書いたが、そのためだろうか、花が使われている歌をよく耳にする。

例えば「世界に一つだけの花」という歌のタイトルを聞くと、素敵な内容の歌が容易に想像できる。もし「世界に一つだけの苔」という歌があったとしても、悪い予感しかしない。

しかし、数は少ないがコケが用いられている歌もある。

この歌の一つがElton Johnの「Your song」だ。

I hope you don't mind I put down in words
How wonderful life is while you're in the world 
I sat on the roof and kicked off the moss---

気持ちをこめたこの言葉があなたに届きますように。
ただ君がいてくれるだけで、今日一日が素晴らしいものになっていくんだ。
屋根の上に座ってコケを軽く蹴飛ばすと・・・

さらっと聞き流してしまいそうな歌詞だが、実はここには奇妙な問題が潜んでいる。

(続く)
茅葺屋根。ハイゴケが旺盛に生える。
茅葺屋根に生えるヒロハツヤゴケ

1月 続・コケと歌

まず、屋根の上座ってコケを蹴飛ばすためには、屋根にコケが生えていなければならない。

Elton Johnの生まれ育った英国には、実は日本と同じような茅葺屋根の家屋があり、特に田園地帯に多い。しかも、冷温で湿潤な気候のためだろうか、コケが生している屋根も少なくないようだ。

こうした茅葺屋根の管理の一つに、「苔落とし」とか「苔払い」と呼ばれる、屋根に生えたコケを削る作業がある。

そう考えると、照れくささにはにかんで苔を蹴散らしているわけではないのかもしれない。恐らく、茅葺屋根の管理もあり、「屋根のコケを蹴散らす/払い落とす」ことは、極めて自然なことなのだろう。

さて、問題はここからだ。

(続く)
こけら葺きの屋根とコケ
門構えの上のコケ

1月 続々 コケと歌

ここで「なぜ苔落とし」が必要なのか、みてみよう。

ただ、「苔落とし」と呼ばれていても、実際にはコケだけでなく、木の実生や草なども茅葺屋根から取り除かれている。

それでも、「苔落とし」と呼ばれているのは、茅葺屋根ではコケが目立ち、さらに、「苔があると過湿になり、茅葺屋根が腐食しやすいから」、と考えられているからだろう。

つまり、茅葺屋根を腐食から守り、長く維持させるために「苔落とし」が必要とされているのだ。

でも、これは本当に正しいのだろうか?

茅葺屋根の茶室

1月 続々々 コケと歌

結論からいえば、コケは茅葺屋根に対して、たいして影響を与えていないようだ。

茅葺屋根を劣化さえる要因としては、(1)過湿などによる腐食、(2)風雨や日光に晒されることによる劣化、の2つの要因がある。

たしかにコケは、多かれ少なかれ、(1)の要因の影響を大きくしているかもしれない。その一方、コケのマットがあることで(2)の要因の影響を軽減している。トータルでみたら、コケがあろうとなかろうと、茅葺屋根の寿命はたいして変わらないようだ。

しかし、コケが茅葺屋根にとって悪者でないとしても、「苔落とし」とか「苔払い」ということ言葉はなぜか妙になじんでいる。これが「草木落とし」だったら、ここまでのしっくり感はなかっただろう。

コケと晩秋の茅葺屋根
コケと真冬の茅葺屋根

1月 続々々々 コケと歌

Elton Johnの歌に戻ろう。

今一度改めて考えてみると、この歌は蹴飛ばされたのは「コケ」だからこそ、歌詞がすんなり頭に入ってくるのではないだろうか。「屋根に座って草木を蹴っている姿」では、何だかいらついているようにみえてしまう。

その一方、「屋根に座ってコケを軽く蹴っている姿」は、どこかもの思う様子を想像させ、この歌詞に甘美な雰囲気すら漂わせている。

以前、記したように、苔は茅葺屋根に悪影響を与えているわけではない。しかし、「苔落し」と管理にみられるように、除去すべき対象として疎まれてしまうことも少なくない。

ただ、コケはこうした扱いを決して悲観的にはとらえていないのかもしれない。疎まれつつも、「コケ」は他の植物では代替の利かない「コケにされる役」として活躍しているのだから。

なお、コケ庭には茅葺屋根がよく似合う。
茅葺屋根と苔庭
茅葺屋根と苔庭

2月 雪とコケ

2月に入り、寒さも一層厳しくなった。大学周辺は厚い雪に覆われている。

でも、雪を少し掘り返すと 、みずみずしいコケが顔を出す。


まるで雪下キャベツのようだ。

キャベツを収穫せずに畑に放置したまま冬を迎え、雪の下から掘り起こして収穫したキャベツが「雪下キャベツ」だ。これらのキャベツは寒さに抵抗するため、アミノ酸などを通常よりも多くつくる。そのため、雪下キャベツは普通のキャベツよりも甘くなるようだ。

雪下キャベツのように、雪の下のコケもいつもより甘くなっているのかもしれない。
秋の森
冬の森

2月 コケ講演会(苫小牧にて)

北海道内でのコケ人気の高まりを受けて(?)、3月に道内の博物館でコケに関する講演会を行うことになった。

「きれいなコケは、好きですか」

どこか違和感があるような、でも、よくよく考えると納得できるような、タイトルにしてみた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

誰だって、きれいなものは好き。だから、「きれいなコケ」も好きになるはずだ。

ただ、果たしてコケはきれいなのだろうか?

ちょっとぼんやりしているところはあるけれど、風情あるステキなコケ庭を思いかべると、何となくきれいなコケもある気がする。

そう考えると、やはり「きれいなコケ」は、どこかにあって、そうしたコケは好きなのかもしれない

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

タイトルを聞いて、こう感じる人もいるかもしれない。

でも、ひとつだけ、勘違いがある。
どこかでみた「きれいなコケ」は、実は家の近くにある「ふつうのコケ」と同じ種類なのだ。

だから、少し視点を変えて身近なコケをみると好きになれる…かも。
案内(表)
案内(裏)

2月 冬の森とコケ 凍ったコケたち

寒くて着物を更に重ねて着るという季節「着更着(如月)」。

北海道は一日中氷点下になる日も少なくない。
森はすっかり雪に覆われている。

こんなとき、コケはどうやってこの寒さを過ごしているのだろうか。

雪を掻き分けてみつけたホソバミズゴケは、カチカチに芯まで凍っている。 少し強く押せば、パキっと折れてしまう。

でも、コケは死んでいるわけではない。凍ってしまうことは想定済みなのだ。

雪下キャベツではないけれど、低温に対するコケの応答は極めて巧みだ。

またの機会に「コケの凍結」について紹介したい。
凍てつく森
凍てつくコケ(ホソバミズゴケ)

2月 和菓子とコケ庭

コケ庭を眺めながら和菓子を頂ける穴場の(?)喫茶店(甘味処)がいくつかある。

先日、この一つに訪れる機会があり、残雪がまばらにあるコケ庭を拝見させていただいた。

コケ庭のコケはハイゴケーフロウソウが主になっており、ところどころにトヤマシノブゴケが大きな群落をつくっている。これらは、いずれも自然に侵入した種のようだ。恐らく、自然に生えてきたコケを増やして作った庭なのだろう。

この喫茶店のまわりにはコケ庭がほとんどない。

しかし、こうした地域でも、庭の環境を理解し、適切な整備を行うことで美しいコケ庭をつくることができる。

コケ庭を見ながら食べる和菓子は、何だかちょぴり贅沢だ。

某喫茶店のコケ庭。 主にフロウソウとハイゴケ
喫茶店内よりコケ庭を眺める。

2月 北陸とコケ コケ庭の宝庫?

「コケが美しい地域はどこか」

そう聞かれてまず思い浮かべるのが 「屋久島」という人も多いだろう。コケに興味をもっている人は、「八ヶ岳」「奥入瀬」などを挙げるかもしれない。

 では、「手軽に美しいコケが楽しめる地域はどこか」と聞かれたら、どこを思い浮かべるだろう?

いろいろな地域が該当するが、その主要なものの一つが「北陸」だ。

なぜ北陸にコケが多いのか・・・その理由は少々長くなるので、またどこかで紹介しようと思う。ここでは論より証拠、北陸の街をみてみよう。

写真はある和菓子屋さんの駐車場の植栽木のまわりを写したもの。街の中心、しかも駐車場という環境ですら、コケがところ狭しと広がっている。

「弁当わすれても傘忘れるな」という言葉もある北陸は、コケにとって適した生育環境のようだ。
街中の駐車場の一角を占めるコケ(ハイゴケ)
ハイゴケ。春らしい色をしている。

2月 つららで作られた苔の洞門 

支笏湖では毎年2月に「氷濤まつり」という氷の祭りが行われる。

その展示の一つに「苔の洞門」があった。

トドマツを編んで作られた洞窟に入ってみると、無数のツララが垂れ下がり、緑色のライトで照らされていた。 

本物の苔の洞門の写真と並べてみて・・・どうでしょう?
ツララでつくられた苔の洞門
モデルとなった苔の洞門

3月 氷筍(氷のタケノコ)とコケ コツボゴケ

「氷筍」を聞いたことがあるだろうか?

読んで字のごとく、氷が伸びてタケノコのようになったものだ。北海道南部の一部の地域では「にょろにょろ」と呼ばれている。見た目はある漫画のタケノコキャラによく似ている。

氷筍をよくみると・・・透き通った氷の中でコツボゴケがキラキラ輝いていた。

春になると、融けた氷筍に含まれる水や栄養縁類を吸収して、コツボゴケの生長が始まるのだろう。

冬の間は氷筍に乾燥から守られ・・・春には水や栄養分を供給してもらうコケ。なかなかうまく氷筍を活用しているようだ。 
にょきにょき生えた氷筍
氷筍のなかのコツボゴケ

3月 屈斜路湖のマリゴケ

体調不良で休んでいる間に、だいぶ暖かくなった。

 屈斜路湖には、「マリモ」ならぬ「マリゴケ」がある。水流の影響でマリモのようにコケが丸くなったものだ。

このマリゴケを作るコケには幾つか種類があるが、近年、その1種が確認されていないという。

どうやら屈斜路湖の水の酸性度が下がったことが原因のようだ。

そのコケを探しにはるばる屈斜路湖まで行ったのだが・・・ほぼ全面結氷していて、コケどころではなかった。

やはりコケ探しは春から秋に限る。 
屈斜路湖。

3月 北海道の春 「フロウソウ」

今年は雪が少なく、林床から早くも大地が見え始めた。

よくみると、背の高いフロウソウがあちこちで顔を出している。

冬の間、ずっと雪の下で春を待っていたフロウソウ。十分な水分と光を浴びてとてもみずみずしい。

しばらくは雪融けによる「水特需」も続き、コケの生長シーズンに突入する。

散歩のたびに、春を待ちわびていたコケに出会える季節でもある。


今日は少し雪がぱらついている。

優しいひびきの「名残雪」。

春はすぐそこだ。

雪から顔をだしたフロウソウ
みずみずしいフロウソウ

3月 卒業の季節 「ヤノウエノアカゴケ」

先日、学会で信大のときの指導学生に会った。

卒論・修論、がんばったね。

卒業おめでとう。


学会会場からでると、野原一面がヤノウエノアカゴケで覆われ、赤色に輝いていた。

学生時代を過ごした京都では、この季節、花がいたるところで咲き乱れていた。

でも、北の大地では、まだ福寿草くらいしか咲いていない。

卒業祝いの花束の代わりに、ヤノウエノアカゴケの「真紅の苔の花」で、お祝いかな。

ちょっと集めるのが大変そうだけれど。。。
野原一面を覆うヤノウエノアカゴケ
真紅の苔の花

4月 北海道へ、ありがとう

今年は雪が少なかったせいか、雪解けが早いようだ。
林内ではいたるところで、タマゴケの柔らかなエメラルドグリーンが輝いている。そういえば、このHPを始めたとき、ちょうどタマゴケがきれいな色をしていた。

北海道で季節を一巡したのだ。

北海道・・・自分が思っていた以上にコケが多く、また、美しい地域でした。今年もまた、去年と同じように、四季折々の美しいコケの景観をみせてくれるのだろう。

ここで、一つ、お知らせがあります。

突然ですが、4月より、福井県立大学に着任いたしました。北海道の関係者の皆さま、本当にお世話になりました。

といっても、北海道と縁がきれたわけではありません。苫小牧という研究拠点?もできましたし、進行中のプロジェクトもあるので、ちょくちょく北海道に戻ってきます。

学生時代から「生物親和都市」の研究の場である「京都」、山岳研究を継続している「信州」、北方域のフィールドとして「北海道」、そして、新たに着任したコケ庭の宝庫「北陸」。

これからは、「京都」-「信州」-「北海道」-「北陸」の各地域の特色を生かした研究を、展開しこうと計画しています。

福井をはじめとする北陸の方々、これからどうぞよろしくお願いいたします。

出発の日の早朝、苫小牧の森を散歩した。

タマゴケ、オオシッポゴケ、フロウソウ・・・春を待ちわびていたコケたちが、柔らかな日差しのなか、キラキラ輝いていた。

北海道へ

美しい景色、ステキなコケ、充実した日々を本当にありがとう。
出発の朝みたタマゴケ
みずみずしいタマゴケ
出発の朝みたオオシッポゴケ
キラキラ輝くオオシッポゴケ

4月 「苔庭の宝庫・北陸」へ こんにちは

このたび、福井県立大に異動しました。

http://fpuinfo.fpu.ac.jp/fpu/system/php/faculties_open/showone.php?id=oishiy


以下、大学のHPによせたメッセージです。

家のまわりで、通学路で、空地で、コケをみつけたら、少ししゃがんで目線をコケにあわせてみてください。

すると・・・そこには、いつもの視点では決して気が付かなかった小さなコケの世界が広がっています。

遠くからみるとただの緑色の塊のコケですが、よくみると、さまざまな色があって、清楚な形をしていて、キラキラ透き通っていて・・・「身近にこんなにもステキな世界があったんだ」と感動を覚えることもしばしばです。

 ある時は健気に、ある時はしたたかに、またある時はたくましく生きるコケ。

そんなコケの姿をみて、「ほっこり 」してみませんか?

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「北陸へのコケ進出」の第一歩として、今期、コケについて学ぶ「コケの世界」という講義を開講しました。

30人程度の受講者を予定していたのですが・・・蓋を開けてみたら、その10倍の300人の学生さんが受講してくれることになりました。

学生さんが「コケって面白いんだ」と思えるような、知的好奇心を刺激するような講義にできますように。


 
荘厳な福井の苔庭
麗しい石川の苔庭
鮮彩な富山の苔庭
陰影に富む新潟の苔庭

5月 福井のコケ風景

休暇を利用して、福井県内をぶらり散策した。

「ブラタモリ 」という人気番組があるが、街の歴史的な背景や自然環境、コケの生態/生育環境を考慮しながら、コケの美しい地域を探探するコケ散歩は、どこか、この番組に似たところがあるのかもしれない。

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福井は立地上、京の都に近く、さらに、文化的素養が高かった戦国大名・朝倉家の影響もあったせいか、都を思わせるようなコケ庭が点在している。

いずれも本場「京のコケ庭」にひけをとらない美しさ・・・とくに乾燥しがちな5月でこのしっとりとした美しさを維持しているのは、北陸の気候が大きく関係している。


また、少し山間に入れば、コケに覆われた地蔵群や、コケがみずみずしい清流など、風情あるコケの風景が広がっている。

福井のコケは想像していた以上に見応えがありそうだ。

ガイドブックなどには紹介されていないものが多いせいか、GWにも関わらず、静かにコケをみることができる穴場の数々・・・

もし、にぎやかな観光地にあったならば、これらは観光客が絶えない場所になっていただろう。

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著書「苔三昧」を出版してから、新たなご縁がいろいろとあり、コケやコケ庭に関する新たな情報がぐんっと集まった。

これらの情報を整理して、いつの日か、コケ本第2弾の企画がくるまで、じっくり温めておくとしようか。 
京都を思わせるコケ庭/ウマスギゴケ
つつじが色鮮やかなコケ庭/スギゴケ類など
コケに覆われた地蔵群/フトリュウビゴケなど
コケがみずみずしい清流/チョウチンゴケ類など

5月 コケの世界(福井県大・講義) 「ゼニゴケの魅力に気付く回」

福井県大で行っている講義 「コケの世界」では、当然ながら、半期15回×90分、すべて「コケ」の話だ。

コケの基礎的な話だけでは飽きてしまうので、マニアックな話を入れたり、コケの魅力を語ってみたり、野外でコケをしみじみ眺めたりしている。

前回は、「ゼニゴケ」を題材にしてコケの体のつくりを説明した。

しかし、実は、ゼニゴケの秘めたる「お茶目な可愛さ」を伝えることがメインの回だったといっても過言ではない。

一種類でもいい。お気に入りのコケをみつけることで、講義がちょっぴり楽しくなるからだ。

教室でもちらほら声があがっていたが、ゼニゴケはよくみれば、小さな花のようだ。ゼニゴケの花の森には、なんだかメルヘンな雰囲気すら漂っている。

世間では嫌われものゼニゴケですら、愛嬌があって可愛い。いわんや、他のコケをや・・・
ゼニゴケ畑
ゼニゴケ(♀)

5月 コケの世界(福井県大・講義) 「300人でコケリウムづくり」

今日のコケ講義は、約300人の学生とコケリウムづくり。

学生さんたちが予想を上回るクリエイティブなコケリウムをつくってくれて驚いた。

ジブリ系から、動物の森系、草原系、庭園系、戦場系、海系、死後の世界系・・・大人数の講義だからこそ、バラエティーに富んだコケリウムがうまれたのだろう。

これだけで立派な作品集がつくれそう。

みんな喜んでくれたみたいで本当によかった。

がんばって材料を準備した甲斐があったよ。

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受講生が多い講義は大変だけれど、この大人数からうまれる「多様性」が学生さんたちにとっていい刺激となる。

でも、ただ、教壇にたって話をしているだけでは、この多様性は引き出せない。

下手したら、「眠いだけの大講義」になってしまう。

いかにして学生さんの興味/知的好奇心を刺激して、創造性・多様性を引き出すか・・・ここが教員の腕をとわれるところなのかもしれない。

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300個近いコケリウムがそろうと、見ているだけで面白い。

せっかくだし、来週の講義はコケテリア鑑賞会をしようか?
作品タイトル「コツボゴケを草原にみたてて」
クマ&ハイゴケ(学生さん作品)
トトロ&ハイゴケ(学生さん作品)
カエル&エゾスナゴケ(学生さん作品)

5月 コケと教育「コケリウム鑑賞会」

突然だけれど、いま、求められている教育ってなんだろう。近年は「創造性を高める」教育が重視されるようになってきたようだ。具体的には「論理的な思考能力 」「英語力」「情報リテラシー」などだ。

さて、先日の「コケリウム」実習では、「コケリウムの世界観を説明する」レポートを課題とした。一般的に課題の採点というのはあまり面白くないのだが・・・このレポートがまた面白く、傑作だらけだった。

ウィットに富んでいるものから、お茶らけているもの、その一方で、これは一本とられた、という内容まで・・・どれも個性的で、味がある。

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「コケの世界」は論理的な思考力にも、語学にも、情報リテラシーにも、あまり関係がない。

でも、身近な自然環境に目をむけることで、これらの科目とな違った方向から、学生さんの「自由な発想力ー想像力」を刺激しているように感じる。

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「コケ」がちょっと気になる。

これ自体はすごく小さなことかもしれない。でも、心のどこかに「コケ」という言葉が残ることで、日常生活のなかで、本来ならば素通りしてしまった「コケ」の話題がフィルターにひっかかってくる。もちろん「コケ」だけじゃなくて、コケに関連した環境や文化などのトピックも一緒に。。

毎日コケの話題フィルターが働くわけではないけれど、長い目でみたら、このフィルターを通して得られる情報ー知識は無視できない量になり・・・「教養を(少し)高める」ことにつながる。

学生さんが生き生きとコケリウムを作っている姿をみたら、「コケの世界を一つのきっかけとして、新しい視点がうまれるはず!」と、可能性を感じた授業でした。
ナミガタタチゴの上でプロポーズ(学生さん作品)
ハイゴケとアザラシ(学生さん作品)
コケの巣のふくろう(学生さん作品)

6月 コケと滝 フロウソウなど

だんだんと夏らしくなってきた。

涼を感じたくなったときには…【コケに覆われた渓流】がお勧めだ。

瀧のまわりには小さな水しぶきが舞い、あたり一面をしっとりさせる。

こうした場所にはコケがびっしり生える。

でも興味深いことに、多くの場合、「たくさんの種類のコケが生えている」というより、「限られた種類のコケが一面に生えている」ことが多い。 

この「限られた種類」の代表は、ミズシダゴケやフロウソウだろう。

フロウソウはやや湿り気のある場所ならば、郊外でもみられ、そのヤシの木のような可愛らしい姿から人気も高い。

が、自然の中、とりわけ、滝のまわりのフロウソウは、その美しさに抜きんでている。
この環境がフロウソウによくあっているのだろう。

美しいコケがみられる豊かな自然が守られていきますように・・・
コケと滝
コケと滝
滝とフロウソウ

6月 コケと湖 ウカミカマゴケ

コケと滝の相性はすこぶるいいのだが・・・同じ「水系列」でも、湖は事情が違う。

もちろん、コケが美しかったり、興味深いコケがみらえる湖もあるが、総じて、湖にコケは少ないのだ。

ひとつには、湖は水深が深くいことがあげられる。

暗くなるとコケは光合成ができないため、水深の深いところに生育することはできない。かといって、藻類のように漂って、湖の表面近くに生育することも難しい。つまり、湖ではコケが分布できる範囲が限られてしまうことになる。

さらに、湖では水流が少ないことも関係がある。
一部のコケは水流が早いところにのみ分布している。これは水流が多いとその分、水の中に溶けている二酸化炭素を吸収しやすくなり、光合成に有利になるためだ。こうした点においても、ゆったりとした湖はコケの生育にあまり適していない。

でも、湖畔をよくみると、少ないながらもコケがみられる。

やっとみつけたコケを写真に収めて湖を後にした。



見るからにコケがほとんどない湖
コケがありそうだけれど、ない湖
やっとみつけた湖畔のウカミカマゴケ

7月 コケの季節「梅雨」

梅雨にはいり、じめじめした日が続いている。

しかし…いや、だからこそ、コケが美しく輝いている。

この美しさに、もはや説明は不要だろう。



静寂に包まれる庭
コケと夏椿

7月 コケ庭ゼミ

梅雨の晴れ間を利用してゼミ生と大学近くのコケ庭へ。

講義の時間を利用して、こんなにも美しいコケ庭に行ける大学はそうそうない。

決して便利な場所ではないけれど、その分、恵まれた自然環境を楽しんでもらえたら、と願う。
ゼミ生とコケ庭にて

7月 コケ庭と梅雨明けー間近

京の都に近かったためか、福井には随所に京文化の面影が残っている。

戦国大名 朝倉家。

「北の京」とも呼ばれた一乗谷を本拠地にして100年の栄華を誇ったものの、織田信長の軍勢により、わずか数日で街は灰塵に帰した。

しかし、今も庭園の巨石が往時をの忍ばせている。

諏訪館跡庭園は上下二段式の林泉回遊式庭園で、泉水や築山、石組みが巧みに配置されている。質実剛健な庭ではあるが、一乗谷のたどった歴史も相まり、どこか寂し気だ。

周囲にはエダツヤゴケ、ハイゴケなどが群落をつくり、梅雨時には美しい。

一面をコケが被う庭ではないが、朝倉家の歴史をみてきた巨石群にひっそりと生えるコケもまた趣がある。



 


一乗谷の唐門
諏訪館跡庭園
苔で覆われた石垣

7月 コケ庭と梅雨明けー名残

梅雨の苔庭は一際美しい。

…みずみずしくて 生命力にあふれていて しっとりしていて かがやいていて…

この時期にコケ庭をみて、コケにはまってしまう人もいる。

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いよいよ梅雨が明ける。そして、暑い夏がやってくる。

あんなにも美しかったコケが、しなびたり、ときには茶色に変色したりして、枯れてしまったの?と心配されることも少なくない。

でも、コケは枯れたわけではなく、時折の夕立で生気を養いながら、夏の暑さと乾燥をじっと耐えている。しっとりとした秋がやってくるのを首を長くして待っているのだ。

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梅雨のコケには生命力にあふれているが、秋のコケは色も落ち着き、その姿には哀愁さえ漂っている。

落葉するわけでも、紅葉するわけでもないコケ。でも、その小さな姿には、季節折々の変化が表れている。

微笑むコケ地蔵
あたり全体が緑霞むコケ庭
こじんまりと整ったコケ庭

7月 東京の苔の風景 ヤノネゴケなど

人口1000万人を超える世界有数の都市・東京。

この東京でさえ、ステキな苔の風景が広がっている。

右の写真は、まるで奥入瀬(青森)のような印象がある。

でも、いずれも東京都内なのだ。
昼に新宿を出発しても日帰りができるくらいの場所。
改めて日本はコケが豊かな地域だ、と思う。
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なお、写真の渓流でもよく目立つのが「ヤノネゴケ」だ。 

でも渓流のまわりをじっくりみると…
オオスギゴケ、アオハイゴケ、エダツヤゴケ、ハイゴケ…などなどが大きな群落をつくっている。ほかにもヒノキゴケやキツネノオゴケの大群落があったり、、、思った以上に豊かなコケ群落がひろがっている。
場所によっては冷温帯と暖温帯の種が同時に出現したりして、なかなか興味深い。

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そう、小さなコケの世界は 首都・東京にも広がっているのだ。
しかし、こうした世界に気が付くかどうかは人それぞれ。

気が付いても気が付かなくても、そこには美しいコケの世界がある。

それなら、気が付いた方が、人生ちょっぴり得した気持ちになりますよね?

小さいけれど、毎日の暮らしを楽しくするヒントがコケの世界にあるのかもしれない。

奥入瀬のようだが、ここは東京
ここも東京
ヤノネゴケで覆われた転石

8月 コケ観察会と教育

信大のときの卒業生から依頼があり、9月に山梨県内でコケ観察会を開くことになった。せっかく山梨まで行くのだから、ということで、別団体からの観察会の依頼もうけ、二日連続でのコケ観察会を行うことにした。

目標は「10種コケを覚えること」くらいにして、ゆっくりコケをみながら、山道をてくてく歩こうと考えている。

さて、どんな観察会にするか。

野外観察会は、広い意味で、教育の一つだろう。多くの学生さんに講義をする機会を頂いたこともあり、教育についていろいろ考えるようになった。

「知っていること」と「教えること」は違うし、「ただ、教えること」と「上手に教えること」もまったく異なる。そして「一人に教えること」と「大勢に教えること」も同じではない。

ただ、観察会の場合は参加者がほぼ全員、コケに興味があるため、いろいろ話が進めやすい。

難しいのは大学における「コケ講義」だ。
コケに興味はなくても、単位が目的だったり、空きコマということで授業をとってくる学生さんも少なくないためだ。

今期行った一般教養の講義「コケの世界」。
いい講義だったかどうか、は自分ではわからない。

けれど、最終回の講義では、300人近い受講生の温かい拍手に包まれて幕を閉じることができた。

この反応をもって、「コケの世界」がうまくいった、と信じたい。
観察会を行うコメツガ原生林
ナミガタチョウチンゴケ/観察会の場所に多い
イワダレゴケ/個人的に好きなコケ

8月 コケ観察会 山梨編

山梨でコケ観察会をするついでに、もう1つ、コケ観察会を行うことにした。

お天気にも恵まれ、参加者の方が楽しんでくれたようで、本当によかった。

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コケの観察会は・・・ほとんど歩かないことが多い。

コケの面白いところで足をとめ、じっくりみる。
例に違わず、今回も1時間で数百mくらいしか歩かなかっただろうか。
そのため、コケの観察会にウォーキングを期待してくると、泣きをみることになってしまう。

でも…歩かなくても楽しめるということを言い換えたら、しゃがみこむだけで、魅力あふれるコケの世界が広がっていることにもなる。
足元に広がるコケの世界は、小宇宙といってもいいのかもしれない。

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11月には長野と京都で(もしかしたら北海道でも)、コケ観察会を行う予定。

各地域それぞれの魅力的なコケの世界が広がっている。

山には繊細な山のコケが、庭には美しい庭のコケが、都市にはたくましい都市のコケが旺盛に生えている。観察会をするときは、各地域の特徴的なコケを、わかりやすく、そして「最も魅力的な姿/生き方」を紹介しよう、心がけている。

時間も手間をかかる作業だけれど、これには参加者に喜んでもらいためだけでなく、「コケへの敬意」もこめているつもりだ。

・・・次はどんな観察会にしようかな?
コケ観察場所の一つ
多肉植物のようにかわいいウボカタウロコゴケ
ギザギザが目立つイチョウウロコゴケ
ムツデチョウチンゴケ

9月 夏の終わり ジンチョウゴケ

もう、夏が終わってしまう。山の冬は早い。
10月にもなれば、北アルプスや北海道では雪が降る。その前にいくつか調査しておかなければいけない山がある。
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山岳地域には、氷河期の生き残りといわれる種、「レリック種」が点在している。
日本全体が寒冷だったころには広く分布していたが、氷期が終わり、低地からは消失してしまった種だ。

こうした種のひとつが 「ジンチョウゴケ」。

この種には個人的な思い入れがあり、お気に入りのコケのひとつだ。一見するとゼニゴケのようだが、全体が白っぽく、繊細な色合いをしている。このコケの出す胞子体が、ひょんきんでとても可愛い。

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もっとも、このコケは現在、日本では数か所でのみしか確認されておらず、なかなか巡り合うことはできない。しかも、ある地域では、徐々に群落が小さくなりつつある。

いかにして保全していくべきか。今、とりくんでいる研究テーマのひとつだ
ジンチョウゴケ
ひょんきんな胞子体

9月 コケ番組 

コケがじわじわ注目lされているようで・・・最近、メディアでお話しをさせていただく機会が増えた。これまではNHKなどが中心だったが、今回、初めてバラエティー番組に出演することになった(9月15日 朝日放送)。

コケの人気が高まっていることは、とても嬉しい。でも、その一方で、コケへのダメージ(乱獲など)が深刻になりつつある。

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コケは環境の変化に弱く、成長も遅い。ひとたび消えてしまえば、なかなか元に戻らない。さらに、ほとんどの種で栽培技術も確立されていない。

山野草ブームでアツモリソウやセッコクなどが深山から消えてしまったように、コケブームで、一部のコケが消えてしまうことを危惧している。現に、一部の地域では盗掘によってヒカリゴケが消えてしまっているのだ。

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トークは得意ではないけれど、メディアで出られる機会を頂いたことに感謝して、コケの保全の重要性を伝えていきたいと思っている。

(You tubeにアップされていました)

https://www.youtube.com/watch?v=0BzCgoe8v1M


ハイヒールさんたちと(スクリーンショット)
番組で紹介したイワダレゴケ/1つの階段が1年

9月 苔は・・・かわいい?  ムクムクゴケ

「苔はかわいいですよ」というと、「なぜ?」「どこが?」とよく聞かれる。

コケはバラの花のように「美しさ」をアピールすることもなく、多肉植物のように「可愛さ」オーラを発することもない。

道端や木の陰や深い森にひっそりと暮らすために、ほとんど視界に入ることもなく、ときにはじめじめ小汚いと邪嫌にされてしまうことさえある。

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でも、コケは可愛く、美しく、そしてお茶目な生き物だ。ただ、あまりにも控えめで自らの魅力をコケからは教えてくれない。

だから、私たちからコケにアプローチしてあげるのだ。

一歩ずつ、コケに近づいてみると…緑の塊は、実はキラキラ透き通っていて、面白い形をしていて、小さな驚きがつまっていて…いつもの視点ではけっして見えなかった 「清楚でみずみずしい小さなコケの森 」だったことに気が付く。
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今日は雨。買い物には行きづらいし、洗濯物は乾かないし、気分が滅入ってしまう。

でも、そんなとき、身の回りのコケをみると、これ以上ないくらいにみずみずしくて、ほっこりして気分になる。

コケ好きになると、人生、ちょっぴり得するのかも?しれない。
緑の塊が・・・
よくみると面白い形をしていて・・・
もっとみると驚きが詰まってる

9月 秋のコケ庭巡りを楽しむには?

秋のコケ庭は美しい。
真紅の紅葉に深緑の苔。しっとりとした秋の気配と静寂が支配する庭園。自然の美しさと日本の気候風土、わびさび文化が絶妙に組み合わさり、「日本の秋だからこそ味わえる極上の空間」が作り出される。
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コケ庭の楽しみ方はいくつかあるが、ここでは、「コケ庭でコケの名前を覚える」ことを紹介しよう。

著書「苔三昧 モコモコうるうる寺めぐり(岩波書店)」にも書いたが、コケ庭はコケを覚えるのにもってこいの場所だ。というのも、コケ庭にでてくる種は限られており、自分がみたコケと図鑑のコケとの絵合わせが容易にできるためだ。

「ハイゴケ類」ひとつとってみても、コケ庭で出現するのはほぼ普通の「ハイゴケ」だが、一歩山に足をふみいれると、10種近くものハイゴケ類が出現する。これらは、コケの初学者
が図鑑を頼りに見分けるのは容易ではない。

こうしたことは「スギゴケ類」など、ほかのコケにもあてはまる。

日本に1800種近くもあるコケの名前をいきなり覚えるのは難しい。だからこそ、出現する種の限られた/出現パターンのきまった場所で、限られた数のコケを覚えて基礎をつくり、そこから少しずつ、わかる種を増やしていくのが大変効率的なのだ。

前述の「苔三昧」には40種ほどの苔を紹介したが、その多くが国内の苔庭で広くみられる種だ。本著がみなさんの苔庭散策の良きお供になりますように・・・
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ただ、コケ庭巡りで一番楽しんでほしいのは「その美しさ」。

例えば、多国籍料理のお店にいって、名前のよくわからないメニューを食べてすごくおいしかったとする。なんという料理かわからなくても、美味しいものはやはり美味しくて、幸せな気分になれる。

これはコケ庭も同じ。コケの名前がわからなくても、美しいものはやはり美しく、心にじんと響いてくるのだ。
ヒノキゴケと秋のコケ庭
ウマスギゴケと秋のコケ庭
オオシッポゴケと秋のコケ庭
ホソバオキナゴケと秋のコケ庭

9月 きれいな風景とコケ


コケを探しに行くと、なぜか美しい風景に出会う。


「美しい風景のある場所だからこそ、コケがあるのか」

もしくは

「コケがあるからこそ、美しい風景が維持されているのか」


たぶん、この両者は程度の差こそあれ、必要十分条件で、
 どちらが欠けても、不完全になってしまうのだろう。

ただ、いずれにしても、「コケ」を探していなかったら、こうした風景には出会えなかったのは確か。

コケが綺麗な風景を教えてくれているるみたいだ。

朝靄に包まれたエビゴケの渓谷
海老のようなエビゴケ

10月 秋の気配

ほんのり色づく渓流
渓流のオオトラノオゴケ

10月 コケの道

どこまでも続くコケの道。

ただ、これは人が歩くための歩道だ。
コケを生やすためにあるわけではない。コケは勝手に生えただけだ。

だから、このコケの道を守ってほしい、とは、言えない。

人の往来が増えるとともに、コケは消える。
でも、人が歩くための道なんだから、しょうがない。

そうはいっても・・・心のなかでは、ずっとこの景観が残っていくことを、強く願っている。

どこまでも続くコケの道

11月 コケ講義/観察会(信州編)

11月12日、信州でコケ講義/観察会をします!

秋の信州でコケ散歩~コケを知れば、信州がもっと好きになる
観察会のちらし

11月 コケ講義/観察会(京都編)

11月13日、京都府立植物園でコケ講義をします!

秋の京都で苔庭めぐり

12月 コケの森めぐり

11月はコケの調査などで各地を歩いていた。


京都ではお世話になった岡山コケの会のメンバーに会い、ひさびさにコケ話をした。最後に例会にでてからもう、7年にもなる…メンバーも少し入れ替わりがあったようだ。

北海道、屋久島では、前回訪れたときと同じ軌跡をたどって、コケをみた。以前と変わらないところもあれば、大きく改変されてしまったところもある。以前と同じままの景色をみると、なんだかほっとする。

北海道、青森、長野、静岡、京都、鹿児島・・・駆け足だったけれど、不思議なことにコケの景色は脳裏に焼き付いている。どこに何が生えていて、どんな状態で、どのくらいの量があったのか。そして、まわりがどんな環境で、その時に何を考えていたか。

次にくるときは、コケたちはどんな姿をみせてくれるのだろう。

北方・山岳はすでに雪が積もり始めている。
今年度、調査すべき場所はあと、富山、石川、東京、長野、宮崎、台湾、、か。
哀愁漂う屈斜路湖のマリゴケ
静寂が支配する信州のコケの森
「もののけ」が出そうな屋久島のコケの森

12月 年賀状とコケ ホウオウゴケ(鳳凰苔)

今年も年賀状の季節。
コケ屋として、やはり年賀状は、コケネタで攻めなければなるまい。

酉・・・といえば、まずでてくるのが「ホウオウゴケ類」だ。

代表種の「ホウオウゴケ」は葉の縁の細胞が厚く、ルーペ下でも葉縁が線のように色づいているのがわかる。

野外同定が難しいホウオウゴケ類のなかで、容易に区別できる種のひとつ。

小さな葉にいっぱいの水滴をつけた姿が可愛い。
ホウオウゴケ(鳳凰苔)
ホウオウゴケの葉縁。細胞が厚く、線のように見えるのが特徴

12月 年賀状とコケ トサカホウオウゴケ(鶏冠鳳凰苔)

ホウオウゴケもよくある種だが、身のまわりでもっともよくみかけるのは「トサカホウオウゴケ」だろう。

葉のまわりが白く縁どられ、大きなギザギザ(鋸歯)がある。この鋸歯を とさか(鶏冠)にみたて、名づけられている。

鶏冠と鳳凰・・・二つも酉が入り、酉年にはもってこいかもしれない。

ただ、ホウオウゴケ類は酉からすぐに連想できる類で、少し面白味にかける。

プロとして、ここはもっと別の酉で攻めるべきではないだろうか。

鳳凰、鶏、ときたら、次は、、、
トサカホウオウゴケ
葉縁。大きな鋸歯(ギザギザ)あり。

12月 年賀状とコケ クジャクゴケ(孔雀苔)

孔雀だ。

・・・よくあるコケだけれど、森のなかで出会うと嬉しくなるコケの一つ。

やや白味を帯びているせいか、薄暗い林床でもよく目立つ。

羽を広げた孔雀のような姿もさることながら、お腹側の葉(腹葉)が丸っこくてなんだか可愛いらしい。

でも、これもプロのネタとしては甘い。

次の候補は・・・
クジャクゴケ。羽を広げた孔雀のように美しい
腹葉。丸っこくて可愛らしい。

12月 年賀状とコケ ダチョウゴケ(駝鳥苔)

ダチョウだ。

このコケも珍しくはないが、山で出会うとうれしくなる種の一つ。

どこがダチョウなのか、よくわからないが、規則正しく並んだ三角形が美しい。

まあ、これもプロのネタとしたは甘いか。。。

となると、次は、、、 
ダチョウゴケの群落
三角形のフォルムが美しい

12月 年賀状とコケ ウツクシハネゴケ(美し羽根苔)

ホウオウ、ニワトリ(鶏冠)、クジャク、ダチョウ、に続く「酉にちなんだ苔」としては、ハネゴケ類(羽根苔)がある。

なかでも、ウツクシハネゴケは、扇子のようにフワリと広がり、その名のとおり、美しい。

もう、そろそろ年賀状を書かないといけないのだが、ほかには、ハクチョウゴケ(白鳥)などもあり、酉年はコケネタが豊富にある。

中でも、「ウツクシハネゴケ」がその名前からも、新年には似合いそうだ。

・・・ただ、美しさの余韻に浸るためには、茎にはあまり注目しないほうがいいかもしれない。。。


今年も多くの方々に大変お世話になりました。

よい年をお迎えください!
ウツクシハネゴケ。扇子のようにフワリと美しい
でも、その茎は毛深い

2017年1月 もうコケの花をつけたゼニゴケたち

郷里の裏の田んぼには、12月に早くもレンゲが花を咲かせるところがある。小さいころはヒミツだった場所だ。今年も例年通り、花を咲かせていた。

子供のころは気が付かなかったが、ゼニゴケ、カンハタケゴケが近くに豊富に生えている。
コケを専門としていなければ、恐らく、大人になっても決して目に入ってこなかっただろう。

よくみると、ゼニゴケも新鮮な雌器托(苔の花)をつけていた。
しかも、雄と雌が近接している。 

手のひらのような形をした苔の花が雌、円盤のようなものが雄だ。

小さなコケの場合、雄と雌が数メートル離れているだけで、受精できないこともある。
しかし、これだけ近い距離にあるゼニゴケ同士ならば、無事に受精もできるはず。

まだ寒い日が続きそうだけれど、コケに一足早い春の気配を感じた新年でした。


枯草の広がる水田
咲き誇るレンゲ草
雌雄が近接しているゼニゴケ

2月 カタハマキゴケと金平糖

節分もすぎ、暦の上では春になった。

今年の福井は雪が少ない。一度も雪かきをすることなく、春を迎えた。ほんの30年前くらいまで、毎年、数メートル程度雪が積もっていたようだが、それも今は昔。

数千~万年のスケールで考えると、間氷期の今は寒冷化に向かっているのかもしれないが、人が実感できる100年単位のスケールでみたら、確実に温暖化が進んでいるように感じる。

明日から海外にコケ調査に行かなければならない。

現地のカウンターパートへのお土産を考えていたとき、ふと、京都清水の金平糖はどうだろうか?と候補にあがった。と、同時に、カタハマキゴケの無性芽が、頭に思い浮かんだ。

お土産は別のものにしよう。

カタハマキゴケ
金平糖のような無性芽

2月 蘚苔林

この10日ほど、海外の蘚苔林などでコケ調査を行っていた。

霧がよくかかり、木の幹から地上にいたるまで、あらゆる部分がコケで覆われる森は雲霧林(蘚苔林)と呼ばれる。

木の幹はぎっしりついたコケで数倍の太さになり、枝からはコケが所狭しと垂れ下がる。地上もぎっしりとコケが生え、足の置き場に困るほどだ。

こうした蘚苔林では、水や栄養分の循環にコケが非常に大きな役割を果たしている。こうした環境をみたら、もうコケをコケにできなくなってしまう(はず)。

日本では屋久島の一部に雲霧林が発達することが知られている。


もののけの森のごとき蘚苔林
大量のコケが付いた木の幹

2月 コケと観光資源と保全

これまでのコケの多様性・保全に関する研究に加え、次年度から「コケを利用した観光」「観光資源としてのコケの保全」に関する複数のプロジェクトに着手する。

コケ庭の景観修復であったり、自然公園のコケの保全であったり、地域のコケの観光資源化であったり、 、、対象地域は、北海道から北陸、中部、関西と広範囲に及ぶ。

最近、コケがじわじわブームになりつつあるのはうれしいが、その一方で、コケの乱獲が増えたり、不適切なコケ地の管理が広まっていたり・・・素直に喜べないところもある。

事態が思わぬ方向に進まぬよう、コケの専門家として、「今こそ」仕掛けなければならない・・・ちょっとしたコケへの恩返しになりますように。



各プロジェクトに伏線をはりつつ、生物多様性、文化的景観、観光資源化、適正利用をからめて、大きな視点で議論を進めていきたい。



3月 白山開山1300年記念

次年度は白山開山1300年にあたる。
白山周辺(石川ー福井)は平泉寺白山神社をはじめとして、苔の里、那谷寺、永平寺、とコケの見どころが多い。こうしたメジャーどころ以外にも、内緒にしておきたくなるような、苔の名所も少なくない。
そこで、白山開山を記念して(?)、某自治体とコケシンポジウムを現在企画中である。
企画倒れになるかもしれないが…とりあえずは進行中だ。

3月になり、日に日に春めいてきた。

しかし、越前はまだ雪深い。

平泉寺白山神社のコケが顔を出すまでに、あと数週間はかかりそうだ。


 
3月初旬の白山神社

3月 新学期

新学期の自分の講義は

コケゼミ(前・後期)
コケの世界(前)
マイナー生物学(前)

と情報処理。

今年度は学生さんが非常に多かったので、次年度はコケの精鋭たちを選抜し、苔まみれになりたい。マイクロバスも2回ほど借りているので、「一乗谷朝倉家の歴史とコケ巡り」、「平泉寺白山神社の白山信仰とコケ庭巡り」、などができそうだ。個人的に歴史が好きなので、コケと歴史をどこかで絡めてみたいと思う。

本学は「個性ある大学」を理念としているためか、「コケ」を前面に押し出した講義ができる。一般的に、ほとんどの大学で、「コケを扱うよりは樹木を…」「コケではなく、もっと広い内容で・・・」となり、「コケ」をメインにした講義はしづらいことが多い。

コケ学だけでなく、恐竜学、スワヒリ語、などの講義もあり、こうしたマニアックな内容を学べる大学は極めて珍しい。もし、コケと恐竜とスワヒリ語を学びたい、という学生がいたら、進学先は日本ではここだけかもしれない。

フキノトウも大きくなり、もう少ししたらタケノコ堀のシーズンだ。雪がとけたら下見にでもいこうか。
コケの多い大学
ハイゴケエゾスナゴケ
優占種のひとつ「エゾスナゴケ」

4月 コケゼミ

福井にも春が駆け足でやってきた。

さて、5月14日に小松市でコケゼミをします。

タイトルは
「凛とした庭園の主役 スギゴケ類を極める」

まずは第1回ということで、スギゴケ類を中心に、小松市の苔の里でコケ講義や観察をします。綺麗なコケの新芽が楽しめることでしょう。定員は30名…さて、何人くらい集まるのだろう?

申し込みは先着順で、hiyou.koke@gmail.com まで

http://forestofwisdom.org/201704/
春の一乗谷

5月 コケ観察会@コケの里 

いろいろあって、すっかり季節が5月になってしまった。

明日はコケの里でコケ観察会。各地でコケの観察会はいろいろあるけれど、「コケの生態学者」ならではの観察会にしたいと思っている。

コケをみることで、自然をみる目が、人生が変わったよ、というような・・・ね。

募集してすぐに定員になり、参加できなかった方々もいるようだし、近々第2回を開ける…かな?
散る桜 残る桜も 散る桜

6月 信州でコケ講義

気が付いたら梅雨になってしまった。なんだかいつも同じようなことを言っているような気がする。

いよいよコケが美しくなるシーズンということで・・・
来週、6月24日に信州でコケ講義・観察会を行います。

(と募集をかけようと思っているうちに、定員いっぱいになってしまった。すみません)

今年は空梅雨になりそうだが、そのときはそれなりのコケの楽しみ方もある。

コケの種類や分類、コケの健気でたくましい生き方、文化における意義、地域の自然における役割、そして世界的な環境変化に翻弄される運命など、いろいろな視点からコケの魅力を紹介できたら、嬉しい。



見頃のコケ庭/庭園調査で訪れた京都にて
見頃のコケ地/海外の研究者をご案内中に
見頃のコケ/山地でみたホソミゾゴケ

6月 烏川渓谷緑地 シッポゴケ

烏川渓谷緑地(長野県)での観察会。
参加者の方々、お疲れ様でした。

ここにはシッポゴケが比較的多い。

タカネカモジゴケから始まって、ハイゴケ、ヒジキゴケなどの都市のコケから、
オオトラノオゴケ、タマゴケ、トヤマシノブゴケ、フロウソウ、などの山地性のコケをみて、
クマノチョウジゴケ、イワダレゴケなどの亜高山帯のコケで終わった観察会でした。

次は、また新しいコケをみましょう。
シッポゴケ
湿ると放射状に葉がひらく
茎は白い毛で覆われる

7月 コケの腹葉

来週は松江(島根県)で招待講演があり、コケと化学の話をする。
島根といえば、出雲大社、宍道湖、由志園、足立美術館、島根県立大学か。

化学系の若手研究者が集まっているそうなので、新しい共同研究のきっかけができることを密かに期待している。

生態的にも化学的にも、コケにはいろいろと興味深い話題がある。

どんな話題をふろうか考えつつ、発表に使うであろうコケの写真をとっていた。

タイ類コケの腹葉はいろいろな形があって面白い。

丸い服葉のフルノコゴケ、下ベロのようなオオクラマゴケモドキ、ギザギザのついたジャバウルシゴケ。いずれも大学付近でみられるタイ類だ。ただ、みんなタイ類をいちいち探したりしていないので、気が付いていないかもしれない。

なぜこんなにも形が多様なのだろう。

この理由を解くために、今、アイデアを温めている。
フルノコゴケ
オオクラマゴケモドキ
ジャバウルシゴケ

7月 観光利用で消えゆくコケ

6月の日経新聞で「コケの名所10選」が紹介されたように、今もコケブームが続いている。
一部では、観光地としても注目を浴びてきている。

同時に、観光利用されるにつれて、人の影響が強くなってコケが減少している場所も少なくない。

コケはとても繊細な生き物だ。
剥がしても 踏んでも すぐに消えてしまう。
そして、一旦コケが消えてしまったら、たとえ環境が維持されていても、元と同じようにコケが復活するとは限らない。


先日、苔の美しさで有名な神社でコケの森コンサートがあった。

コケの上にセットされたステージと観客席…まるで映画のように幻想的で、それは見事はステージだった「と思う」。

「と思う」としたのは、自分には、とても悲しい光景にみえたから。

…コンサートの後には、きっといたるところでコケが押しつぶされたり、剥がれているはずだ…


そして、残念ながら、その予想は的中してしまった。

この一年で、ここのコケはだいぶ変わってしまった。これはとてもデリケートなテーマだけれど、機会があれば、この話をしたいと思う。
コケの森のコンサート
コンサート会場の椅子
椅子の下になって変色したコケ(茶色)

8月 コケを守るには?

まだ今ほどコケが人気が出る前、ある神社の境内は、本当にコケであふれていた。

いたるところがコケで覆われ、足の踏み場もないほどだった。

欧州や京都で問題になっているが、観光産業は地域の活性化に貢献するとともに、負の影響を及ぼすこともある。これはセンシィティブな話なので、ここでは、生態学的な事実だけ述べたい。

来訪者が増えた今、散策路を中心にコケが減り始め、当時のコケがうっそとしたいた景観は少しずつ消えつつあるのだ。

ある人は「観光利用でコケが減っても、もともと自然に入ってきたコケだから、そのうち回復するよ」と思うかもしれない。

でも、人為的な影響を強く受けているうちは、回復するどころか、減少する一方だろう。

さらに、今は事態を深刻にしつつあること起きている。環境があまりにも変わりすぎてしまったのだ。

地球温暖化の影響が強く出ているのか、豪雪地帯の福井でさえ、昨年度は雪かきを1度もせずに終わった。20年ほど前は数メートル雪がつもるのが当たり前だった地域なのに。


世界で一番素晴らしいと思っていたコケ庭。
数年後、どんな景観が広がっているのだろうか。
2013年。境内はコケにあふれていた。
2017年。コケが消え、その種類も変わりつつある

8月 苔狛犬

苔と狛犬の関係を研究して、かなりの年月が過ぎた。

あるとき、うちの犬に似ている狛犬を神社でみつけた。モフモフした毛並みがコケで再現されていた。

その姿に衝撃を受け、以来、苔に覆われた狛犬を「苔狛犬」と定義し、全国で苔狛犬を探し続けてきた。

狛犬は各地でいろいろな姿があり、マルチーズタイプから、ライオンタイプまで、多様性に富んでいる。そしてそこに生えるコケも異なる。

神社の環境、石の素材、管理、歴史・・・さまざまな要因が関係して、苔狛犬は生まれる。
多変量解析を駆使しても、その成り立ちを解明するのは容易ではない。

苔狛犬の奥深さである。


苔狛犬研究会の会長として、後世に研究成果を残していかなければならない。

福井県の苔狛犬
大分県の苔狛犬
福岡県の苔狛犬

9月 南北アルプス調査

今年は秋が駆け足でやってきた。

9月から、北アルプス、中央アルプス、南アルプス、八ヶ岳の調査にあわてて出かけている。

秋来ぬと 目にはさやかに 見えねども・・・

というけれど、風の音を聞くまでもなく、山の秋は目に見えてやってくる。

紅葉は1日に100mほど山を下りるそうだ。
北アルプスでは、紅葉もだいぶ山麓にせまってきた。稜線上ではそろそろ初冠雪がみられる頃だろう。


北アルプスのミズゴケ湿原
湿原脇のヒロハススキゴケ

10月 北陸の旅館と苔庭

縁あって、静岡、京都、長野、北海道、福井に住み、日本中のコケを調査する機会に恵まれた。

どの地域にも美しいコケの見所があり、「(保全を考えると)ここはまだ人にはいえないかな」というほどの、まだ知られていないとっておきの場所すらある。

日本中のコケをみた経験に基づくと、 「都市域でコケをみるなら北陸」だ。

裏日本に位置し、降水量が多く、一年を通して湿度が高いためだろう。街を少し歩くだけで、小さな緑地に入るだけで、さまざまなコケに出逢える。

庭つきの旅館に泊まれば・・・かなりな確率で、自然と美しいコケ庭ができている。

ウマスギゴケ、オオスギゴケ、オオシッポゴケ、ヒノキゴケ、コバノチョウチンゴケ、エダツヤゴケ、ハイゴケ・・・北陸の庭に優占するコケは、京都の庭園とほぼ変わらない。違うとしたら、ヒノキゴケが非常に多いことだろう。

越前赤瓦と苔の緑との対比もまた北陸ならでは、の景観だ。

北陸は地方ながらも、京文化の影響を強く受けている。仁田義貞ををはじめとして、朝倉義景、柴田勝家など、天下とりまであと一歩まで迫りながら、散っていった武将も北陸には多い。

北陸の苔庭には、そこはかとなく、都の香りが漂っている。


ウマスギゴケ、ヒノキゴケが覆う某旅館
旅館の庭に群生するホソバオキナゴケ
コケに飾られた飛び石

10月 山の秋

少々理由があって、関東周辺のコケの風景を廻る機会があった。

まずは北関東(群馬)から・・・


チャツボミゴケの群生地
ススキの穂とコケ
チャツボミゴケ群落
チャツボミゴケ

11月 高尾山

東京の高尾山に移動し・・・

12月 師走

次年度の企画の準備に追われているうちに数か月が過ぎてしまった。コケの世界は美しく奥深いな、と改めて思う。

今回、自分なりに、この世界に迫ってみたつもりだ。コケにみる世界観、その繊細さ、美しさ、学術的な興味。機会があったら、手にとってもらえたら嬉しい。

今年もそろそろタマゴケの季節。

タマゴケは蒴が人気だが、自分は繊細な緑色と、宝石のように輝く朝露により強く心惹かれる。

夜明け直後のごく限られた時間にみせるタマゴケの繊細な色と雰囲気は、写真ではあらわせない。

早起きは三文の徳・・・コケ観察にもあてはまりそうだ。

では、よいお年を。
タマゴケ
朝露をつけるタマゴケ

3月 消えゆく日本のコケ

いろいろあって、しばらくぶりに「今日のコケ」を書いている。

春がきて、いよいよコケ観察シーズンが始まる。

コケの研究を始めてから、それなりの年月がたち、いろいろな
フィールドを調査する機会に恵まれた。
その成果からみえてきたこと、それは「日本のコケが劣化している」という、少々、寂しいトピックだ。

そろそろ研究紹介も更新しないといけないが・・・
都市から遠く離れた高山でも、あるいは歴史的名園でも、
どうやらコケの様子がおかしい。
調べてみると、地球レベルの環境変動や、活発な人間活動が、
少しずつ、しかし、確実に、コケに影響を及ぼしていたようだ。

皮肉なことに、
コケブームと反比例するように コケは消えつつある

あのコケの風景をみたい、と思ったときには、
もうその風景は過去のものなっているかもしれない。

小さなコケの中に、大きな環境問題がみえるのも興味深い。

いや、小さなコケだからこそ、
大きな環境問題がみえるのかもしれない。

人間の暮らしに影響を及ぼすには些細な環境問題でさえも、
小さなコケの世界には十分すぎる脅威になるのだから。
消えゆく庭のコケ
消えゆく山のコケ

4月 コケと新入生

福井にも少し遅い春がきて、大学構内のサクラが満開だ。

「田舎で遊ぶことところがない」と新入生たちはちょっと嘆いているかもしれない。
が、
田舎だからこそ、楽しめるものもある。

そう、コケだ。


大学構内にこれほどコケが生えているキャンパスは、日本にもそうそうないだろう。


ぜひ、他大学に自慢してほしい。

お洒落なカフェはなくても、うちの大学にはコケがあると。


コケに囲まれ過ごす4年間は、一周まわって渋くみえる。
それどころか、クールにさえ思われるかもしれない。

大学構内で咲き誇る桜
桜色と苔色
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