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コケから考える都市生態系の保全

 

(背景)

本来、都市の立地する低地に分布する生物にとって、都市の緑地は重要な生息・生育場所です。しかし、都市開発や人間活動の影響によって、都市緑地の環境は、本来のものとは大きく変わってしまいました。そのため、これらの緑地から消えてしまった生物も少なくありません。こうした都市の環境は、コケにどのような影響を与えているのでしょうか?

 

 

(目的)

ここでは、樹幹のコケを研究対象として、都市緑地の環境がコケの多様性に与える影響を解明し、その保全について考察しました。

 

 

(結果)

京都市内の孤立緑地の樹幹を調査したところ、実に100種ほどのコケが確認され、この中には希少種としてレッドリストに掲載されている種も含まれていました。

 

そこで、コケと環境との関係を解析した結果、コケの多様性や希少種の分布には都市の緑地サイズが大きく影響していることが分かりました。

 

 

(考察)

山地のように連続した緑地と異なり、都市の緑地は小さく分断されているため、乾燥しやすいことが分かっています。

 

コケはその体制上、もともと大気の乾燥化の影響を受けやすく、さらに、大気に晒されている樹幹は大変乾燥しやすい環境にあります。こうしたコケの生態をふまえると、緑地サイズの縮小に伴う乾燥化はコケ、とりわけ、樹幹上のコケに大きな影響を与えていると考えられます。

 

 

(重要な成果)

都市緑地では、乾燥化の影響でさまざまな生物の多様性が低下していることが明らかになっています。こうした生物の中でも、樹幹に着生するコケは特に乾燥化の影響を受けやすく、都市緑地の乾燥化の優れた指標になると考えられます。

 

樹幹に着生するコケ:ホソバオキナゴケ
ヒナノハイゴケ:蒴の先端がやや赤みを帯びる
コモチイトゴケ:つやのあるマットをつくる
コダマゴケ:帽がお寺の鐘のような形をしている
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