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都市の庭園はコケのオアシス?

(背景)

都市の緑地ではコケの多様性が高い場合があるとはいっても(参照;都市緑地のコケ保全)、人間活動や開発によって都市部ではコケの生育地が大きく失われてしまいました。しかし、こうした状況にあっても、日本庭園では、付近ではみられないような種が生育していることがわかりました。一体、なぜでしょう?

 

(目的)

そこで、日本庭園をコケ多様性の謎を解明すべく、研究を行いました。

 

(結果)

まず、日本庭園のコケ多様性の特徴を把握するため、庭園を含む複数のタイプの都市緑地のコケ多様性を比較しました。その結果、日本庭園では、さまざまな形(生育形)をしたコケがみられることや、小型のコケが多く生育していること、が分かりました。

そこで、庭園環境とコケ多様性との関係を調べ、日本庭園で高いコケ多様性が維持されている理由について検討しました。その結果、このコケ多様性は、庭園環境の多様性と管理手法と強い関係があることが分かりました。

 

(考察)

以上の解析結果から、庭園で高いコケ多様性がみられる理由として、次の2つが挙げられました。(1)小山や池、滝などを配して多様な環境を造り出す庭園のデザインが微小な環境の影響を受けやすいコケの多様性を高めていること、(2)除草などのきめ細かな管理が草本や落ち葉の被覆によるコケの消失を防いでいること、です。

 

(重要な成果)

どうやら日本庭園は、そのデザイン・管理手法そのものがコケの多様性の維持にぴったりのようです。生物の多様性が失われつつある都市の中でも、日本庭園はコケのオアシスとして、機能していると考えられます。

生物多様性の視点から、日本の庭園文化の新しい意義を明らかにしたこの研究成果は、人と自然とのつながりを考える上で興味深いものです。

日本庭園:コケは景観上、重要な要素
日本庭園の多様な環境:小川や池など
日本庭園の多様な環境:石垣など
日本庭園の多様な環境:手水鉢など
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